鴫

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令和7年6月号より
代表近詠
老いさせぬ
加藤峰子
老いさせぬため飾りけり雛人形
享保雛の傾ぐ飾りに手を出さず
吊されて踊り足らざる雛納め
前投票さくさく済ませ春の野へ
河津桜見上ぐ生徒も警官も
春泥を大きく掬ひショベルカー
荒行の落下のしぶき霞立つ
春鴨の豹変二羽の恋喧嘩
開け閉ての倉庫花種蒔きにけり
春光やみそ汁椀に煮干しの眼
名誉代表近詠
シーソー
橋道子
花の雲ひそひそと古る城下町
傾いて止まるシーソー花ふぶき
灯おぼろ海底めける時計店
冴返る灯や甘たるきミルクティー
開くるたびベル鳴る扉花の雨
きやうだいに理系のをらず春満月
春雨に貰ふ繕ひものの時
当月集より

をみならに老人交じる梅見かな
荒井和昭
雨来ると囁き交はす柳の芽
田村園子
二月尽足を組み換ヘジントニック
荒木 甫
日の本の雲行き怪し菜の花忌
石田きよし
淡雪の踊る単線B特急
成田美代
人の世は清らかなりや地虫出づ
山口ひろよ
靴音は歩けるあかし弥生尽
中山皓雪
口裏を合はせし如く春霞
箕輪カオル
雄弁な漢野焼の香を纏ひ
平野みち代
佐保姫の手をとりやらむ渡し舟
甕 秀麿
防人の歌碑に駒返る草そよぐ
宇都宮敦子
きさらぎの大き一樹に鳥遊ぶ
坂場章子
麗かや老舗蕎麦屋の列につく
和田紀夫
緋毛氈に焼きそば喰みつ梅まつり
鎌田光恵
紅梅や地面近くの小枝にも
原田達夫
みちのくの蕎麦屋にもらふ蕗の薹
松林依子
ざつくりと野蒜を拔きし穴に雨
山内洋光
雛人形氷雨にたたむ袂かな
奥井あき
野球部のグローブ拭ひ卒業す
三木千代
武闘派の余寒去り行き背筋伸ぶ
西村将昭
佐保姫のいきなりきびす返しけり
笠井敦子
春の坂くだるに足の指力
田部井幸枝

寒麦集より

泥ぷくと棚田の蜷の動き出す
五十嵐紀子
春興や円空仏の背の墨書
清瀬朱磨
逃水を自動運転バスが行く
木澤惠司
辻切の藁の大蛇や下萌ゆる
柴田歌子
産声は赤子の本気草青む
野口和子
踊り出す河童の影や春の沼
中村久一
春泥や地下足袋脱ぎて参観日
秋元政子
メール打つ指が踊るぞたんぽぽぽ
島田喜郎
啓蟄や兄の拭へる肥後守
土門なの子
名のみ出で苗字浮かばぬ木の芽どき
齋藤哲子

羽音抄

紅梅や大仏耳朶にピアス穴
鎌田光恵
かたくりの花の高さにカメラマン
和田紀夫
滂ばうと垢離の水音や若緑
山口ひろよ
京雛を上座に据ゑて安房神社
箕輪カオル
店頭に間取り図あまた蝶の昼
成田美代
老木にまだある未来臥竜?
山内洋光
這ひ這ひの稚雛壇へまつしぐら
平野みち代
戻り来て絵馬を正す手受験の子
奥井あき
入院の朝やはらかく炊く菜飯
五十嵐紀子
肩もみに春眠出入りしてをりぬ
西村とうじ
橋脚の太きボルトや春一番
清瀬朱磨
花言葉信じて選む種袋
野口和子
春泥や作業着慣れし七年目
秋元政子
白魚の五臓六腑や観察子
鶴岡伸雄
可惜夜の待ちにまつたり春キャベツ
鈴木征四


旧字体等で表記できない文字は書き換えています
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