代表近詠
老いさせぬ
加藤峰子
老いさせぬため飾りけり雛人形
享保雛の傾ぐ飾りに手を出さず
吊されて踊り足らざる雛納め
前投票さくさく済ませ春の野へ
河津桜見上ぐ生徒も警官も
春泥を大きく掬ひショベルカー
荒行の落下のしぶき霞立つ
春鴨の豹変二羽の恋喧嘩
開け閉ての倉庫花種蒔きにけり
春光やみそ汁椀に煮干しの眼
名誉代表近詠
シーソー
橋道子
花の雲ひそひそと古る城下町
傾いて止まるシーソー花ふぶき
灯おぼろ海底めける時計店
冴返る灯や甘たるきミルクティー
開くるたびベル鳴る扉花の雨
きやうだいに理系のをらず春満月
春雨に貰ふ繕ひものの時
当月集より
寒麦集より
羽音抄