代表近詠
伴走者
加藤峰子
春天に立つ日蓮の気迫かな
伴走者と選手をつなぐロープ冴ゆ
約束のやがて時効にミモザ咲く
刃物屋の唸る研磨機春立てり
春立つや煤跡しるき縄目土器
塗椀に麩の紅咲きて雛の膳
くちびるは種火のやうや内裏雛
親しきは真ん丸顔の内裏雛
読経聞こゆ雛壇おくの奥の闇
御殿雛の華やぎにゐて寂しかり
名誉代表近詠
この道
橋道子
百年を褪すれど老いず内裏雛
豆雛も並べて売られ饅頭屋
ふと買うて一生ものの春セーター
オリーブ油に目刺を焼いてこれもよし
眼薬を四種さす間の春の月
胸奥の闇霽らすかに白木蓮
卒業の無きこの道を梅真白
当月集より
寒麦集より
羽音抄