代表近詠
かくも静かに
加藤峰子
ポタージュやかくも静かに年迎ふ
ソプラノとアルトの笑ひ福寿草
待春や絵柄選りたる七百号
浮世絵を狂ふほど見る雪女
水仙やすつくと泥のカメラマン
笹鳴を映して句碑の琥珀色
薄氷や伝へる言葉まるくして
かじけ鳥日に一便の停留所
裸木の大揺れ初志を育てをり
寒禽の赤き眼光跳ねきたる
名誉代表近詠
雛祭
橋道子
川沿ひの空き地三角凍ゆるむ
町なかに樹木葬墓地鳥帰る
逃げやすき丸薬を追ふ浅き春
青絹を広げたるかに春の空
雛祭めざす私鉄のカーヴ急
白髪の随臣雛の大き笑み
雛段の鏡台に我が杖映る
当月集より
寒麦集より
羽音抄