鴫

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令和7年3月号より
代表近詠
遊ばせて
加藤峰子
青空へ収まりきれぬ冬紅葉
晩節の素志遊ばせて柚湯かな
園守の仮眠の詰所湯気立つる
暮の荷や駆け足の背に礼を言ふ
児ら嬉嬉と寒柝一打星へ打つ
冬天や重機重機の日本橋
灯台の孤高へ蒼き寒怒濤
年の瀬のやさしき声の還付詐欺
声寄せて肩も寄せ合ひおでん鍋
冬眠の里や真つ逆さまに星
名誉代表近詠
獅子柚子
橋道子
裏川のしづかに満ちて年の暮
冬夕焼どこか不調の門扉閉づ
省略に省略重ね年用意
獅子柚子の渋面ゆるむ初明り
家中の椅子を集めて二日かな
耳裏に日矢とどきたる松納め
女正月活けてすがしき啓翁桜
当月集より

霜晴れや点滴の針固定さる
荒井和昭
裸木のけやき通りをサイドカー
田村園子
二十億光年千光年の枯木星
荒木 甫
あれもこれも洗ひ流して帰り花
石田きよし
足高くあげよと落葉積もりをり
成田美代
北斎の鳳凰の眼と合ふ冬麗
山口ひろよ
難聴の一寸気になる針供養
中山皓雪
銀杏散る心ゆくまで散り頻る
箕輪カオル
流れゆく一朶の雲や石蕗の花
平野みち代
クリスマス百の柄ある包み紙
甕 秀麿
大根一束奉納者の名くろぐろと
宇都宮敦子
赤ばかり選んでをりぬ散り紅葉
坂場章子
襟足に落葉のかかる下山かな
和田紀夫
せせらぎの丸太の橋や笹子鳴く
鎌田光恵
帰り来し鵯の番のはしやぎやう
原田達夫
ふくふくと母の手編みの白セーター
松林依子
鴨来たる谷津の水面を目覚めさす
山内洋光
子ら播きし冬菜ふた筋合流す
奥井あき
誘はれて赤い鉄橋紅葉渓
三木千代
大枯野息急降下して消えぬ
西村将昭
終活の果ての平穏石蕗の花
笠井敦子
片時も吹かれ散らぬ葉冬青空
田部井幸枝

寒麦集より

弱音吐く部下に一喝できず冬
川P康
極月の始発電車のディーゼル音
小山たまき
目覚しに返事してをり年の暮
宮ア根
悪人の墓から墓へ雪女郎
足立良雄
鳥カフエのふくろふ百羽どさと飛ぶ
渥美一志
鍵持たぬ夫待つ夜のホットワイン
安井和恵
夜なれば海鼠ため息ついてをり
五十嵐紀子
冬ぬくし名のない家事とFMと
土門なの子
三度目の町に古り住み柚子育つ
齊藤哲子
出番なき革手袋の野生の香
尾川美保子

羽音抄

夕刻の暗さ継ぎ足す冬の雨
西村とうじ
風道の癖を残して芒枯る
川P康
バトンのやう丸めて配るカレンダー
箕輪カオル
嫁が投げ舅の受ける掛大根
和田紀夫
湯豆腐や遠き恋など語らんか
平野みち代
煮こごりのよろける姿勢正しけり
山内洋光
羽子板市傾げてあれば傾ぎ見る
奥井あき
鳥好きの友に知らせむ鴨来たと
尾川美保子
大根干す低く大きく国際線
土門なの子
二の酉の屋台の列の奥の闇
山本とう子
体内にカメラ入るるも年用意
渥美一志
冬晴や「じやあね」と発ちし俊太郎
安井和恵
はじめ絹麻へ綿へと枯尾花
秋元政子
冬もみぢ涙の跡のある埴輪
清瀬朱磨
闇を抱くヒマラヤ杉の寒さかな
本田しずる


旧字体等で表記できない文字は書き換えています
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