代表近詠
遊ばせて
加藤峰子
青空へ収まりきれぬ冬紅葉
晩節の素志遊ばせて柚湯かな
園守の仮眠の詰所湯気立つる
暮の荷や駆け足の背に礼を言ふ
児ら嬉嬉と寒柝一打星へ打つ
冬天や重機重機の日本橋
灯台の孤高へ蒼き寒怒濤
年の瀬のやさしき声の還付詐欺
声寄せて肩も寄せ合ひおでん鍋
冬眠の里や真つ逆さまに星
名誉代表近詠
獅子柚子
橋道子
裏川のしづかに満ちて年の暮
冬夕焼どこか不調の門扉閉づ
省略に省略重ね年用意
獅子柚子の渋面ゆるむ初明り
家中の椅子を集めて二日かな
耳裏に日矢とどきたる松納め
女正月活けてすがしき啓翁桜
当月集より
寒麦集より
羽音抄