代表近詠
森は柔らか
加藤峰子
反対の扉が開く神の留守
ママの手に酢飯の匂ひ七五三
くつくつと力抜きをり煮大根
冴ゆる月「もてなしや」てふ和食店
音響班へ届く弁当熟れ蜜柑
縁側の穂芒闇に飛ぶかまへ
縄文の森は柔らか冬の鵙
冬蝶の日にくるまれて遊ぶなり
園丁の菰巻き互ひを称賛す
答出るまで紅葉まみれの木のベンチ
名誉代表近詠
凩
橋道子
乱調の凩森の声となる
黄落にまみれて動く車列かな
南総の遅き紅葉も末のころ
冬蝶やまだ売れぬらし一区画
上敷の隅の捩れや十二月
控へめに聖樹の置かれリハビリ室
親切の身にしみし日のコート脱ぐ
当月集より
寒麦集より
羽音抄