鴫

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令和6年10月号より
代表近詠
死ぬふりの
加藤峰子
打水の先頭まるく走り出す
起重機は街を変へゆく川蜻蛉
死ぬふりの気力で起てり黄金虫
万緑や父の顔しておとと来る
ゼラニューム切詰め空を軽くする
若竹の撓ひ大きく空を掃く
漕ぐ汗や膝こきこきと絵画展
梅雨明の丸窓海中水族館
アイスティー詩?肥やすに話す詠む
老鶯や墓碑湿らせて会話する
名誉代表近詠
十六ささげ
橋道子
向日葵の孤高明るし影もまた
放水にホースのたうつ日の盛
青を濃く十六ささげ胡麻和へに
掬ひけり徂徠愛せし冷奴
一木に縋れば灸花もかな
秋立つや丁寧に拭く炊飯器
グラニュー糖注げば光る今朝の秋
当月集より

たも網の孫太郎虫覗き込む
荒井和昭
緑陰のバス停少女眉を引く
田村園子
日哂しの影を真下に夾竹桃
荒木 甫
追伸に梅雨の晴れ間に逢ひたしと
石田きよし
雄弁な若き研師の涼しき眼
成田美代
つくづくと眼かなしき鵜の睥睨
山口ひろよ
頼朝の駒どめの石黒揚羽
中山皓雪
風にまだ馴れぬ早朝蓮の花
箕輪カオル
青葉雨スティックシュガー半分に
平野みち代
一山の息づかひかな滴りて
甕 秀麿
シャツ一枚フラワームーンの物干しに
宇都宮敦子
梅雨の鯉尾ひれに泥を巻き上げて
坂場章子
紫陽花の己が重さを持て余す
和田紀夫
枝広ぐ勝手はうだいミニ蕃茄
鎌田光恵
はたた神這ふやうに逃ぐ椋の群
原田達夫
インバウンドに縁なき輩ところてん
松林依子
八幡宮の古き廻廊蟻の列
山内洋光
菖蒲田の真中木の橋二歩の橋
奥井あき
ふる里の震度五強の青山河
三木千代
箸置きはガラスの金魚夏来る
笠井敦子
鬼百合は可憐な花よ俯きて
田部井幸枝

寒麦集より

夏の蝶落着き見せぬ御土居かな
西村とうじ
夕刊のレシピ切り抜く花菜漬
柴田歌子
ほんたうは首を回さぬ大向日葵
渥美一志
草刈の匂ひの祖父と朝餉かな
安井和恵
老い先の果てのぼんやり心太
足立良雄
片蔭に寄りて続きの立ち話
橋洋子
幣掛けも梅雨湿りなり大公孫樹
宮ア根
カーブして入道雲を乗せにけり
土門なの子

羽音抄

老鶯の声のうはずる谷深し
成田美代
四人掛けの卓に一人のひと夜酒
箕輪カオル
形代の肩いからせて流れ去る
奥井あき
紫陽花やのら猫たちの入会地
足立良雄
川上る姿に焼かれ串の鮎
和田紀夫
しんがりの蟻は重責列守る
渥美一志
万緑を横にながすや電車旅
尾川美保子
川岸に涌くほうたるに噎せにけり
西村とうじ
驟雨来る底まで刺さるパフェの匙
野口和子
雲の峰海を産湯に育ちけり
西村将昭
星まつり達筆の短冊に誤字
山本とう子
かなかなを遠くに仕事仕舞ひとす
森しげる
ホームラン真夏の太陽まで届け
宮川智子
角度五十厨のドアの扇風機
別人簔虫
腕組んで考へる顔三尺寝
本田しずる


旧字体等で表記できない文字は書き換えています
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