代表近詠
死ぬふりの
加藤峰子
打水の先頭まるく走り出す
起重機は街を変へゆく川蜻蛉
死ぬふりの気力で起てり黄金虫
万緑や父の顔しておとと来る
ゼラニューム切詰め空を軽くする
若竹の撓ひ大きく空を掃く
漕ぐ汗や膝こきこきと絵画展
梅雨明の丸窓海中水族館
アイスティー詩?肥やすに話す詠む
老鶯や墓碑湿らせて会話する
名誉代表近詠
十六ささげ
橋道子
向日葵の孤高明るし影もまた
放水にホースのたうつ日の盛
青を濃く十六ささげ胡麻和へに
掬ひけり徂徠愛せし冷奴
一木に縋れば灸花もかな
秋立つや丁寧に拭く炊飯器
グラニュー糖注げば光る今朝の秋
当月集より
寒麦集より
羽音抄