代表近詠
シテのやう
加藤峰子
雨上がる夏蝶シテのやうに出づ
卯の花散る地に骨粉を置くごとし
再生の蜘蛛の囲さらに緻密なり
蜜吸うてより夏蝶の傾ぎ癖
図書室に少女の寝息緑さす
「子燕に注意」老舗の逆さ傘
チェンソーの唸りを握る麦わら帽
流木に亀の連なる夏至の池
除草剤ばらばらと撒き歯科通ひ
軽装で集ふ盛夏の祝卒寿
名誉代表近詠
名脇役
橋道子
花蓮の風のうるほひ懐に
物語はじまりさうな薔薇の窓
梅雨闇の音のしんしん諦めず
猫真似る体操そろり青ほほづき
扇風機名脇役として置かる
見はるかす炎暑の街の喘ぎやう
引く波は後ふりむかず月見草
当月集より
寒麦集より
羽音抄