代表近詠
緋の川
加藤峰子
階段は緋の川千の雛の目
きぎす鳴く貝塚の藪裂くやうに
裸婦像と春を抜けだす非常口
芽吹く木のふるへは発憤かと思ふ
春ショール巻くための首引きいだす
春昼の古書かさこそとパラフィン紙
ひばり野や少年一人ボール蹴る
ボタン孔固き制服四月来る
美人画の細き上がり目春愁
語らねば師の教へ消ゆ柳の芽
名誉代表近詠
蝶の道
橋道子
黄の飛んで人には見えぬ蝶の道
烏の豌豆焼きおにぎりの醬油の香
ふらここの少女はすでに秘密持つ
卓布変へけり春光は鼓舞の色
まづ椅子を出して開店草餅屋
花の奥きらり医学部新校舎
花ぐもり晩年といふ非日常
当月集より
寒麦集より
羽音抄