代表近詠
始まる
加藤峰子
敗荷に音の始まる乾きかな
石庭の目立ての渦や小鳥来る
哀れ蚊を寄せ小肥りの日蓮像
小物縫ふ一坪店や木の実降る
小野川の綺羅より明くる秋祭
動きしか泥のやうなる鵙の贄
虫すだく闇のあちこちさはさはす
「天晴」の墨書の勢ひ秋日和
銀河への希望の旅券失効す
秋土用喫煙室の無言の徒
名誉代表近詠
長考
橋道子
待宵の明りに洗ふ牛乳箱
新調の眼鏡にいよよ月大き
月光やしまひ忘れし花鋏
伐り詰めし沙羅の木に秋逝くばかり
あたたかき十一月は掃除月
玩具選るための長考毛糸帽
鴨一家まことしやかに滑りゆく
当月集より
寒麦集より
羽音抄