鴫

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令和5年12月号より
代表近詠
月うるむ
加藤峰子
出来秋の享保とある水神碑
露草を抜かず養ふ垣の瑠璃
ちちろ鳴く昼を灯して金物屋
闇動く二百十日の猫の鈴
蟷螂の複眼脂ぎつてをり
鬼の子の人恋ふ時の揺れ激し
月うるむ夢二葉書のをとこ文字
石投げて澄む水起す二人かな
秋澄むや文字の小さな座右の書
半世紀使ふ表札銀河濃し
名誉代表近詠
能舞台
橋道子
ピクルスを嚙むやひりひり秋旱
荒む世の敬老の日のどら焼きよ
退屈といふ贅沢の木の実独楽
露けしや空缶捨つる音二秒
菊の雨父の遠忌はにぎやかに
かの世との往き来を露の能舞台
紅葉且つ散る鈴振ればことさらに
当月集より

草の花活けていただくいなりずし
山ア靖子
馬の肩に励ましの鞭赤とんぼ
荒井和昭
通院日しるす九月のカレンダー
田村園子
ゑのころやスーパーで買ふ文藝春秋
荒木 甫
朝風を吸うてあくびの敬老日
石田きよし
釣人の踏跡著し葛の花
成田美代
白服の免許証写真やや若目
山口ひろよ
八月やナツメロとして聞く軍歌
中山皓雪
水澄むや朽ちかけてゐる丸木橋
箕輪カオル
三十路てふ父母に敗戦布告の日
平野みち代
法師蟬鳥にならむと落ちにけり
甕 秀麿
炎天下光るヒジャブの颯爽と
宇都宮敦子
今朝秋の聞きなしてゐる風の音
坂場章子
新涼や風にめくるる広辞苑
和田紀夫
行き止り多き我が町秋の蝶
鎌田光恵
息つめて見ればどこにも秋の色
原田達夫
まづ一束稲架に干されて観察田
松林依子
人生の節目三つ四つ地虫鳴く
山内洋光
月大きどすどす餅をつく兎
奥井あき
要介護さらりと決まり水羊羹
三木千代
薬袋の膨らんで来し虫の声
笠井敦子
西瓜苗楽しく育ちをりにけり
田部井幸枝

寒麦集より

陸奥の旅色なき風に身をゆだね
安井和恵
一年にたつた一日敬老日
足立良雄
残照にことさら熟るる実むらさき
江波戸ねね
来世より戻つて来たと友さやか
木澤惠司
吾亦紅揺れず大利根ゆるり往く
立花光夫
今日の地球今日の青空墓洗ふ
土門なの子
憤然と濁世遠のく秋の蛇
五十嵐紀子
残る蟬ゴルフボールは木々の中
川P 康
友の死のつい遠退きて小鳥来る
西村とうじ
晩夏光犬が顔出す乳母車
齊藤哲子

羽音抄

秋晴や山がよろける峡下り
西村将昭
悔ゆる日はぬるめの風呂と月明り
江波戸ねね
塩効かせ二百十日の握り飯
坂場章子
マイペースなのに好かれて赤とんぼ
松林依子
片付けてルンバ遊ばす秋の部屋
島田喜郎
お転婆の今日は花嫁秋高し
平野みち代
車夫憩ふ秋の藪蚊を叩きつつ
成田美代
夜食取る部下を帰して悠々と
川P 康
ポケットを新書はみ出て秋めけり
足立良雄
刈稲を顔ごと抱へよたよたと
森しげる
芋嵐道具の多き剣道部
宮ア根
草の花日々返事良きかよひ猫
齊藤哲子
先々に眼鏡を置いて文の秋
別途簔虫
葛の花ティアラのごとく咲き上がる
秋元政子
タンデム車妻をうしろに秋桜
鈴木征四


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