代表近詠
青き朝
加藤峰子
充電完了八月の青き朝
秋立つや坂なき村の「稲架」の句碑
雨上る耳痛きほど蟬の声
鳴囊の膨らみきつて青蛙
草むらの秋蝶樹下のキッチンカー
望遠鏡我も我もと夏休み
棘育て胡瓜ぐいぐい曲りけり
踊の輪青きタトゥーの短き衣
盆休みマンション住戸にまばらな灯
手を添へて茄子の馬より母迎ふ
名誉代表近詠
五感
橋道子
底紅の底を覗けば風の音
性急な嘆願のごと秋の蟬
自らを語らぬ人の秋扇
懐しは恥づかしに似る烏瓜
大銀杏ひやひやの影広げけり
調理台に半身あづけ切る南瓜
梨食みて五感しづかに衰ふも
当月集より
寒麦集より
羽音抄