代表近詠
青大将
加藤峰子
夏空に響く護岸の波リズム
樹の幹を締めては弛め青大将
亀まぶたぼんやり開く芒種かな
縞とかげ石にひかりと尾を残す
万緑や綱を自在の手長猿
夏燕寅さん像を旋回す
百段の地下鉄出れば夏ぎらり
夏菜渡さる見廻り組のやうな人
ヨガマットの幅の体操緑の夜
追ひつけぬ距離となる忌や青簾
名誉代表近詠
発酵中
橋道子
あてどなき風雅の着地ねぢれ花
樹を辷るくちなは青しうら若し
しがみつく堂の手摺の梅雨湿り
梅雨の月発酵中といふ光
レンジ無きころのレシピの夏料理
すぐ消ゆる蜥蜴わが家の先住者
名探偵なべて独り身籐寝椅子
当月集より
寒麦集より
羽音抄