鴫

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令和4年12月号より
代表近詠
目覚むれば
加藤峰子
要塞めく工場群や虫すだく
鬼やんま零番線のある駅舎
裏返り奮ひ立ちては秋の蟬
湯浴みせばデビューしたての虫の声
塒へと釣瓶落しの羽音かな
金盥に並べ売らるるつくねいも
木の実拾ふ森の窪よりけもの臭
見返り美人画右肩の秋思かな
目覚むればすべてが過去や唐辛子
天の川母に最期の紅をひく
名誉代表近詠
ペア
橋道子
鰯雲ペアのスマホとペアの杖
病棟裏が金木犀の発信地
自販機に声かけらるる星月夜
ゼムクリップのゼムにつまづき夜長し
高々と十三夜月波郷の月
一つ家に住み尽くさむととろろ汁
覗き見のこの世の隅の花野原
当月集より

痛みもて花野の露にぬれゐたり
山ア靖子
鯔跳ぬる一期の夢の覚むるとき
荒井和昭
螺子回し効かぬねぢ釘秋暑し
田村園子
山の気の満ちて九月の通り雨
田令子
鶏頭花カキクケ喝と咲きにけり
荒木 甫
遠富士や一羽の鳥の描く素秋
石田きよし
水音の花野の幅をつかひきり
成田美代
空けなる身をば貫き揚花火
山口ひろよ
柿の空だけが賑はふ過疎の村
中山皓雪
武家屋敷昼深閑と白芙蓉
箕輪カオル
向日葵の芯の焦げ色敗戦忌
平野みち代
昭和が流る九月の歌をシナトラが
甕 秀麿
秋風に声を飛ばされ鬼ごつこ
宇都宮敦子
つくつくし告げたきことの尽きぬやう
坂場章子
中折帽の折れを深くし夏終る
和田紀夫
蒲の絮ほぐれ窪地を流離へり
鎌田光恵
日は軽し雲重くあり処暑の街
原田達夫
医療機具身内にふたつ生身魂
松林依子
古時計小さな秋を告げにけり
山内洋光
梨街道コンベアの梨ゆるゆると
奥井あき
あさがほの白のいたはし朝の雨
数長藤代
歌ふこといつしか忘る秋の蟬
笠井敦子
秋風の叩く雨戸に起こさるる
田部井幸枝

寒麦集より

吾に問ふ何しにここへ秋風鈴
宮ア根
捨てられぬ古書に青春獺祭忌
安井和恵
法螺貝の音で始まる運動会
西嶋久美子
ゴダールの勝手に死んで稲光
足立良雄
秋暑し迷子になりしパスワード
近澤きよみ
焼き上がる食パンのごと稲田かな
西村将昭
童らと地産地消の梨狩に
渥美一志
鳳仙花弾けて喜寿よさやうなら
江波戸ねね
グランドゼロにゴスペル聞こゆ涼新た
木澤恵司
人生万事起承転結ほふし蟬
重廣ゆきこ

羽音抄

もろもろの秋思を括る紐あらば
奥井あき
かなかなの声へ飛び込むホームラン
土門なの子
柘榴の実爆ぜたり戦争終はるべし
みたにきみ
波が波越えて舟打つ葉月潮
鎌田光恵
稲架一条掛けて神事の饌とせむ
和田紀夫
レトルトの粥のぬくみも秋の色
成田美代
太刀魚や煮ても焼いても色白で
江波戸ねね
きちきちの齧り残しの薬味摘む
五十嵐紀子
蒲の絮風に躓きゐたりけり
西村とうじ
ゑのこ草笑はせる役わらふ役
山口ひろよ
チェロケース背負へば巨大かぶとむし
島田喜郎
新牛蒡こんなに入つて五百円
森しげる
苦吟して釣瓶落しの闇にゐる
重廣ゆきこ
健脚の夫には不要瓜の馬
柴田歌子
ふためきて我勝ちに飛ぶ稲雀
向山加行


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