代表近詠
あかり窓
加藤峰子
赤べこの頷いてゐる熱帯夜
万緑に向ける揺り椅子母の昼
梅雨あがる夜はあめ色の掘削土
麻帽子被れば詩人町会長
止り木に静かな笑顔ソーダ水
代はるがはる緑蔭の猫撫でて過ぐ
戻り梅雨博物館のあかり窓
心太突出し器より潮の香
預かり子日の盛りより引き戻す
爪ほどの西瓜白寿を潤せり
名誉代表近詠
螢籠
橋道子
くろぐろと光飲み込む夏の森
粛と乗るさみだれ月の手術台
八重葎いちばん古い住所録
羅の胸ポケットのルーペかな
嘘のなき夫荒使ふハンカチーフ
八月の記憶は海へなだれこむ
化けて出るほどは愛せず螢籠
当月集より
寒麦集より
羽音抄