鴫

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令和4年9月号より
代表近詠
雨余のひかり
加藤峰子
花菖蒲水を豊かに濁らせて
いきいきと雨余のひかりや四十雀
ヘリコプター擦過してゆく今年竹
帰宅児の梅雨をもち込むランドセル
カフェラテに鳥描く汗の息止めて
猫の舌ぴたぴた夏をまるめ飲む
大げさに鎧うて団子虫の夏
早起きの鎌の湿り柄草を刈る
若葉光むすめへ譲る恋衣
好きな枇杷差入れできず面会す
名誉代表近詠
余命
橋道子
風にまで色を映して濃あぢさゐ
梅雨雲を割るや日輪プラチナに
花南天こぼれて母の忌を籠る
寸劇のやうに拾はれ夏帽子
ふいの客めつきり減りぬ金魚玉
リセットの我身の軽し蔦青し
余命とは誰にもひとつ雲の峰
当月集より

畦も消え蛙も鳴かぬ迎へ梅雨
山ア靖子
青蘆に踏み入る怯みちと生ず
荒井和昭
そらみみか螢袋のささやきか
田村園子
艶めきて夏鶯の声遠し
田令子
かたつむり一言主を祀りけり
相良牧人
梅雨に入るひと黙黙とエスカレーター
荒木 甫
包丁と俎板奏づ茗荷の子
石田きよし
結葉や背筋のゆるむテラス席
成田美代
たれかれを愛せず白き薔薇香る
山口ひろよ
老が曳き老が後押す麦の秋
中山皓雪
おしなべて裸婦像眩し薔薇まぶし
箕輪カオル
風薫る草に脱ぎたるスニーカー
平野みち代
些細な一件なれど尾を引く濃紫陽花
甕 秀麿
もてなしの鮒鮓臭しとは言へず
宇都宮敦子
翡翠の青翻し水を翔つ
坂場章子
老鴬の宿にリュックの荷を解けり
和田紀夫
中腹の木洩れ日ゆるる草清水
鎌田光恵
下闇の木洩れ日当たるこのベンチ
原田達夫
咲初めの菖蒲田の水しんと聴く
松林依子
跳ね上げし小指は真直祭笛
山内洋光
ぬばたまの夜やくずるる牡丹百
奥井あき
健やかな声の承諾涼しかり
数長藤代
曲り屋の主とおぼしきひきがへる
笠井敦子
日傘畳みてこころ整ふ石畳
田部井幸枝

寒麦集より

ゆつくりと緑陰を去る尻尾かな
土門なの子
日傘にもなるのもを選る男傘
島田喜郎
焼酎の銘の孤独を愛しめり
足立良雄
濃き味の城下鰈母の味
宮ア根
駐車場のモルタルに「軽」五月雨
川P 康
枇杷の実の覗く板塀向島
みたにきみ
戦ひの止まぬこの星豆御飯
渥美一志
ながらへて忘れ上手や梅雨寒し
江波戸ねね
騒がしく葭切の鳴く平和かな
立花光夫
冷奴どこから切つても冷奴
森しげる

羽音抄

しなやかに撓む強さを凌霄花
三木千代
正解はひとつにあらず遠き雷
成田美代
反り返る緑青屋根や雲の峰
尾川美保子
ハンカチの折目鋭きほどアイロンす
齊藤哲子
隠密のさまに巣に寄る青大将
山口ひろよ
鰺干さる腹に一物残さずに
山内洋光
形代へ沈まぬほどの穢れのせ
みたにきみ
老鶯や凜と立ちたる殉職碑
加藤東風
被るには角度が決め手夏帽子
野口和子
潮目観る漁師の背中雲の峰
木澤惠司
餞別は籠一杯のさくらんぼ
渥美一志
きのふ見し菖蒲田へ妻連れてゆく
島田喜郎
温度計三たび見直す暑さかな
山本とう子
渓谷の細き流れや河鹿笛
塙 貞子
尻尾ほど梅雨の掃除機巻き残る
土門なの子


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