鴫

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令和4年6月号より
代表近詠
色を探しに
加藤峰子
かげろふをふはりと纏ひ太極拳
花種まくシャベルの錆を土に研ぎ
手を打てば男波立てくる春の鯉
縦横に駆け春光のドッグラン
吾になき色を探しに初桜
過去ひとつゆさぶるやうに春一番
痛哭の世独活の手ごはきあく晒す
替芯の減りの速さよミモザ咲く
面会待つ白寿の母へ春帽子
あつぱれの空山吹色の春ふとん
名誉代表近詠
橋道子
草青む赤子げたげた笑はせて
書棚の書右傾左傾や春の燭
天辺へ坂の三本花曇
立像は振り向かずして春怒濤
ぎくしやくと深まる仲よ竹の秋
苦爪とも思はぬ爪を切る春夜
逃水を追ふかに平和ひた祈る
当月集より

芽吹きつつ庭の木ごころ石ごころ
山ア靖子
弟と夢に出会うて梅祭り
荒井和昭
二並びの猫の日韮の卵綴ぢ
田村園子
春寒や時計の音とペンの音
田令子
余熱をも夜着に持込む紙懐炉
相良牧人
おほかたは流るるままに残る鴨
荒木 甫
蛇出でて一筆箋のごとく消ゆ
石田きよし
春風や肩甲骨の閉ぢ開き
成田美代
しがみつく枕も春の夢の中
山口ひろよ
末黒野や命あるもの皆孕む
中山皓雪
三椏は灯りのごとし花盛り
箕輪カオル
きな臭きニュース折角の春なのに
平野みち代
立像を寝かせ修復あたたかし
甕 秀麿
木洩れ日のゆらぎもなくて椿落つ
宇都宮敦子
剪定の枝寄せ集め秘密基地
坂場章子
薄氷の底に何やら動くもの
和田紀夫
いぬふぐり段だら坂の土匂ふ
鎌田光恵
まだ建たぬ角地に群るるつくしんぼ
原田達夫
いつせいに春立ち上がる越の国
松林依子
土筆摘む地のぬくもりも摘みにけり
山内洋光
麦踏んでひよんと逝きたる漢かな
奥井あき
梅の昼肩の力のぬけぬまま
数長藤代
きな臭き国境越えて鳥帰る
笠井敦子
穏やかな日和を梅の散る下を
田部井幸枝

寒麦集より

故郷捨てショパンの国へクロッカス
渥美一志
引出しに母の文鎮春の月
加藤東風
地球儀に探す亀鳴くユートピア
みたにきみ
聴診器へ送る喘鳴冴返る
齊藤哲子
蕗味噌や燗より冷に替へる時
立花光夫
着信はマナーモードに花見酒
伍島 繁
ぶらんこの笑顔スマホに戦火の児
土門なの子
箸逃れ茶漬けに泳ぐ白子干
西村将昭
ひとり居の爪切る音や春愁
安井和恵
吊し雛這子互ひに外方向く
向山加行

羽音抄

耕して逝くべきときを延ばしけり
石田きよし
野に立ちて春一番の的となる
川瀬康
「NO WAR」の声届けかし春の星
坂場章子
蝶の羽蜜を吸ふとき合掌す
奥井あき
強くあれ優しくあれと雛飾る
尾川美保子
車椅子までと撓むる梅一輪
甕秀麿
喜寿となり小粋に被る春帽子
塙貞子
新刊を読むごと剝がす春キャベツ
みたにきみ
微風なら受け入れませう猫柳
三木千代
花菜漬野良の苦みのありてこそ
山本久江
ロボットのやうなる土偶風光る
木澤惠司
干し物を入れて我が家の梅見かな
西村将昭
春眠のうつつを行き来するソファー
重廣ゆきこ
残したき写真選びやうららけし
西嶋久美子
蟻穴を出づ八階のプランター
立花光夫


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