鴫

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令和3年12月号より
代表近詠
忘れ水
加藤峰子
木漏れ日をあつめて点る葉鶏頭
すりこぎの緩急の渦とろろ汁
置手紙のやう干されある唐辛子
昼の虫踏み分けて知る忘れ水
蔦の家のふくらんでくるハーモニカ
新涼の風を手足に嬰眠る
小気味よく剝けひと塩の衣被
ひび割るる魚板の窪みつくつくし
チャーハンを返す白露の中華鍋
秋風鈴ちから残せる舌しまふ
名誉代表近詠
橋道子
蓮の実の飛んで買ひけり紅き杖
ぶり返す秋暑や靴の試し履き
風爽か武将の知恵 水分(みくまり)
押せばふんと泡十月の手を洗ふ
白和に秋風すこし混ぜ込んで
もう増えぬ家族に秋の雷しきり
打ちよせて秋を重ぬる荒磯波
当月集より

二百十日荒ぶる気配もなく今宵
山ア靖子
無愛想な婆の新米にぎり飯
荒井和昭
朝顔の裂けて深閑たる校舎
田村園子
この星に戦ひ止まず九月来る
田令子
落蟬のいぢらしきまで身を寄する
相良牧人
冬瓜のひと筆描きのごと並ぶ
荒木 甫
コロナ渦中燃え立つ聖火秋高し
石田きよし
啄木鳥の森の深さへ音つらね
成田美代
物思ふやうにもとほる秋の蝶
山口ひろよ
晩夏光樹の斑に鯉の背の動く
中山皓雪
口割ればワインレッドの石榴の実
箕輪カオル
鰯雲見下ろす島の造船所
平野みち代
いつゴング鳴つてもよしといぼむしり
甕 秀麿
冷し飴大き器の鳰の海
宇都宮敦子
夕立や西から寄する雨柱
山本無蓋
点眼の一滴秋の夜の静寂
坂場章子
咲き連ね抜きそびれたる灸花
和田紀夫
ひぐらしや大樹は風をつくりだし
鎌田光恵
稲滓火の煙たなびき稲荷まで
原田達夫
一度上ぐ給湯温度白露かな
松林依子
穏やかや晴れの夜明けの蝉しぐれ
数長藤代
ビスケットほろほろ零る残暑かな
笠井敦子
流雲を慕ひ風船かつら伸ぶ
田部井幸枝

寒麦集より

秋澄むやあこがれのひとゆきたまふ
重廣ゆきこ
懈怠なくテレビ体操小鳥来る
五十嵐紀子
丈夫だねと言はれさうかととろろ汁
江波戸ねね
蔓引いて思ひ出たぐる零余子かな
山内洋光
掌に生あたたかき西瓜捥ぐ
山本久江
天高し魔女の箒は脱炭素
木澤恵司
ピーマンの腹のからつぽ潔し
奥井あき
不平不満言へる国なり梨を剝く
齊藤哲子
まじまじと稲の花とや初見なり
宮ア根
令和いま首から下ぐる扇風機
佐々木秀子

羽音抄

メロン畑贋物と知る吊烏
三木千代
生前も死後の母にも桔梗挿す
五十嵐紀子
生きるための闘志を杖に敬老日
柴田歌子
蜻蛉の尾を描くとせば一直線
坂場章子
星一つ加はり先師の句座涼し
甕 秀麿
バンダナをしつかり結び水の秋
成田美代
話さねば皺める声音秋さうび
山口ひろよ
山裾は雨にけぶらひ稲を干す
箕輪カオル
根を堅く花藻流れに遊ぶかな
田部井幸枝
栗飯の湯気荒神の紙垂揺らす
森しげる
小さき風大きく見せて萩の叢
野口和子
初さんま細く短く値は高く
中村久一
そばかすもチャームポイント油点草
尾川美保子
烏口の刃先を研げり夜半の秋
村上禮三
早朝の蓮見の池の出逢ひかな
山本とう子


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