代表近詠
梅雨水輪
橋道子
カーネーション机上に老眼鏡三つ
呆気なく接種終へたり茄子の花
風向きに潮騒を聞く淡竹の子
物持ちのよきが取柄のあつぱつぱ
端居して燃尽き症候ともちがふ
夏掛を抜け出て来る星の夢
死なば死後は一瞬となる梅雨水輪
選者近詠
踏み込む
加藤峰子
騎馬像のあぶみ踏み込む立夏かな
山吹を撮るに分け入る小暗がり
はだれ日に染まる弁当藤の昼
大樹みな枝を揉みつつ青葉へと
予報士の洗濯日和てふ立夏
春宵の勤務終へたる守衛の背
フェルメールの真珠のひかり夏来る
当月集より
寒麦集より
羽音抄