鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

令和3年8月号より
代表近詠
梅雨水輪
橋道子
カーネーション机上に老眼鏡三つ
呆気なく接種終へたり茄子の花
風向きに潮騒を聞く淡竹の子
物持ちのよきが取柄のあつぱつぱ
端居して燃尽き症候ともちがふ
夏掛を抜け出て来る星の夢
死なば死後は一瞬となる梅雨水輪
選者近詠
踏み込む
加藤峰子
騎馬像のあぶみ踏み込む立夏かな
山吹を撮るに分け入る小暗がり
はだれ日に染まる弁当藤の昼
大樹みな枝を揉みつつ青葉へと
予報士の洗濯日和てふ立夏
春宵の勤務終へたる守衛の背
フェルメールの真珠のひかり夏来る
当月集より

その下の盛気いただく八重ざくら
山ア靖子
ポケットの硬貨数ふる滝見かな
荒井和昭
身の輻にカーテンを開け春惜しむ
田村園子
地下街を抜け迷ひ込む青嵐
田令子
春昼の烏賊墨パスタ笑ひ合ふ
相良牧人
吹くままにもつれほぐれて若柳
荒木 甫
ころころと生きたるふたり花は葉に
石田きよし
長ければ色をつつしみ藤の房
成田美代
初夏の指にしつくり象牙箸
山口ひろよ
木洩れ日の光をまとひ竹落葉
中山皓雪
山祠草傾ぎて夏に入る
箕輪カオル
蟻地獄しやがむをの子の膝小僧
平野みち代
夏つばめ宇宙ロケット展示場
甕 秀麿
春の波消ゆるあたりの貝拾ふ
宇都宮敦子
蕉翁も一茶も知らぬ薔薇の垣
山本無蓋
スキップを競ふ父と子花菜風
坂場章子
通勤靴捨てて八十八夜かな
和田紀夫
薫風や釣竿しかと草に挿し
鎌田光恵
大豆撒くポロンポロンと半自動
原田達夫
地の病みて放射冷却春の月
松林依子
夏川の流るる如く病癒ゆ
田原陽子
終演や行く春の月晴れわたる
数長藤代
萌黄色噴き出す樟の若葉かな
笠井敦子
生きてゐて良かつた庭につつじの朱
田部井幸枝

寒麦集より

トス上げる一ドル硬貨風光る
木澤惠司
夕焼けや明日にもちこす志
中島芳郎
リストバンド切つて退院新樹光
宮川智子
妻の留守残り一個の柏餅
濱上こういち
決起いまブルーベリーの白き花
川瀬康
夏場所や小兵頑張れ怪我するな
島田喜郎
病院へ葉桜並木通り抜け
渥美一志
山武杉高さ揃へて夏に入る
西嶋久美子

羽音抄

子ばなれの後の図書館夏つばめ
足立良雄
青き笹むけば火の色鱒の鮨
みたにきみ
臍繰りを衣嚢に移す更衣
西村とうじ
風呂敷の自在に変はる昭和の日
山内洋光
園児室みな良く眠りゆすらの実
五十嵐紀子
黒豹の肩甲骨に春愁
森しげる
不自由な自由巻どころなき鉄線花
成田美代
好きだつたあの子元気かしやぼん玉
安井和恵
夏来たぞ叱咤の鞭を己が身に
中島芳郎
花束にビタミンカラーみどりの日
田令子
山間の細き流れや河鹿笛
塙 貞子
乗つ込みや千尾の鮒の盛り上がり
宇都宮敦子
梅雨兆す遊女の墓に瓶の供花
和田紀夫
春の朝若き主治医の防護服
平野みち代
北斎の浪越え来たる初がつを
鈴木征四


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved