鴫

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令和2年2月号より
代表近詠
たうたう
橋道子
千葉市動物公園二句
嘴広鸛の気長な秋思つと終り
秋日しんと能舞の歩の嘴広鸛
渋柿を剝いて吊るして雨降るな
湖風のあくまで柔し蜜柑山
石蕗の黄や古刹の廊の踏めば鳴る
襖絵の虎の咆哮湖へ抜け
人待つや冬木桜に葉の五六
抱へ来ていまも焼藷似合ふ人
冬ざれの森宇野千代の風の音
川たうたう冬夕焼けを押し分けて
当月集より

不可能を可能に逢へり霧の駅
山ア靖子
蘆の炎のほむら縁取る油煙かな
荒井和昭
蝶番きしむ本箱火恋し
田村園子
十一月雲ひとつなき金曜日
田令子
蟷螂の慕情の色に枯れにけり
加藤峰子
鰭酒の鰭持込みし男かな
相良牧人
一粒がひとつ呟く炒り零余子
荒木 甫
秋行くや亭主も逝つてくれしてふ
石田きよし
松籟や極まる秋の波の音
成田美代
秋さやか霊水を吐く龍の口
山口ひろよ
子と親とそのまた親と七五三
中山皓雪
薬局の白きテーブルポインセチア
箕輪カオル
柿を剝く蔕といふ字の疎覚え
平野みち代
銭湯の煙突都心に冬に入る
甕 秀麿
鮞に飯をよごして昼の酒
宇都宮敦子
けふのみのバイトの巫女や七五三
山本無蓋
包丁を持参の芋煮会準備
坂場章子
布巾二枚まつ新にして冬に入る
田原陽子
燈火親し生ある限り万年筆
数長藤代
「魁夷の青」斑に秋のプラタナス
原田達夫
笹子来てより秒針の進み癖
笠井敦子
秋澄むや音立つカステラのざらめ
田部井幸枝

寒麦集より

入江波砂の光の小六月
鎌田光恵
茱萸の実や砂丘の先に日本海
和田紀夫
破蓮に風生む力ありにけり
木澤惠司
小春日の蝶の連れ来る案内状
江澤弘子
冬霧のにはかに郡上八幡城
五十嵐紀子
てのひらのちくちく間引き大根菜
佐々木秀子
回廊に鯉の水音冬に入る
齊藤哲子
冬浅し一人昼餉の生卵
島田喜郎
煮凝の揺るがぬ息を吐かんとす
江波戸ねね
CTを指す医師の背鵙高音
渥美一志

羽音抄

風伯の磨ききつたる冬青空
江澤弘子
繋留の舟が舟打つ蘆の花
平野みち代
白足袋や市松人形投げ座り
宮川智子
夕間暮たましひ抜ける干大根
石田きよし
瓜坊のやう五歳児の体当たり
松林依子
夕映えのどよめきとして冬の凪
成田美代
阿弖流為の山アテルイの川紅葉燦
甕 秀麿
遊ぶ日の日暮は早し雪ばんば
山内洋光
朝寒や卵割るとき指丸め
宇都宮敦子
山眠る徒手空拳の阿修羅像
足立良雄
のつけから足のもつれや木の実独楽
相良牧人
合掌を忘じて喰らふふぐと汁
中島芳郎
過疎村に星を集めて掛大根
中山皓雪
逆らはず流れに乗らずはぐれ鴨
和田紀夫
冬日和こんな佳き日も誰か死に
山本無蓋
非正規の増ゆる勤労感謝の日
渥美一志
愛らしや泡立草も幼きは
佐々木秀子
白鳥の夕映えを着て争へり
野口和子
振り返る人ゐなくても返り花
中村久一
こそ泥も触手くるはす秋麗
小山たまき


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