鴫

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令和2年1月号より
代表近詠
取りくづす
橋道子
秋湿り潮湿りして白き椅子
七十年前は遠浅椿の実
秋風や笑みてみなとのやうな人
袖丈は短めが好き栗が好き
どこまでを清貧といふ栗の飯
露の上露の零れてひびきけり
沼たひら雨には雨の薄紅葉
クレーンの大爪に冬隣りをり
どこも異郷秋の夕映あるならば
あたたかき十一月を取りくづす
当月集より

声十二分にセンターまつり秋深む
山ア靖子
栗虫の著き穿ちのころがり来
荒井和昭
足の爪切りあぐむ夫秋簾
田村園子
秋高し大漁旗の弓なりに
田令子
秋潮をゆさゆさ男貝を採る
加藤峰子
一人用テントにベビー秋うらら
相良牧人
ドローン浮く秋の蚊のごと高層街
荒木 甫
百の虫中に一匹羽目外す
石田きよし
倒木の倒木としてもみぢ初む
成田美代
ささ波の不二を揺らして秋の湖
山口ひろよ
地震あるも戦なき国大根蒔く
中山皓雪
飴いろの稲架のはなやぐ谷津田かな
箕輪カオル
粒あん派漉しあん派ゐて後の雛
平野みち代
つぶやきが事の発端穭伸ぶ
甕 秀麿
晩稲田の未だ刈られず海昏し
宇都宮敦子
半ばほど冬毛に変はるゆりかもめ
山本無蓋
一鳥へ並ぶ三脚水の秋
坂場章子
秋桜残り時間へ運ぶ針
田原陽子
母の忌のポストに温く栗ご飯
数長藤代
手庇や刈田はるかに稲荷まで
原田達夫
遠目にもそれと分りし蕎麦の花
笠井敦子
初嵐声なないろの鴉どち
田部井幸枝

寒麦集より

終発の迫る桟橋秋ともし
藤沢秀永
絹よりも木綿に馴染み新豆腐
足立良雄
コスモスや子供の好きな色ばかり
和田紀夫
鯉の背の沼面切りゆく破蓮
鎌田光恵
刈りたての稲の香りを吸ひ込めり
山本久江
秋深し飛車に仕掛かる蒔絵筆
西村とうじ
秋天や婚ある浜に椅子並ぶ
加藤東風
無住寺の庭に箒目櫨紅葉
立花光夫
芋煮会甘い辛いの鍋奉行
渥美一志
妻入院舵なき暮らし霧の中
島田喜郎

羽音抄

種採りて命乾かす事よりす
三木千代
秋寂ぶの音せぬやうに置く受話器
山口ひろよ
一灯のランタンを買ひ菊を買ふ
加藤峰子
星流る己の在るを否定して
甕 秀麿
長き夜の機に掛りし上田縞
宇都宮敦子
落日の地球の悪寒秋の蛇
荒木 甫
水切のやうな跳躍鴨渡る
箕輪カオル
くはしくは知らぬ留年こむらさき
遠山みち子
空覆ひ空を傾け椋鳥の群
成田美代
母語る菊の被綿欲しけり
宮ア根
身に入むや文字の大きな辞書の鬱
足立良雄
秋出水まづ米櫃を高きへと
齊藤哲子
倒木の猿の腰掛さらぼへる
安井和恵
人柄を映す写真家秋薔薇
松林依子
宵闇や隣家にそつと寝台車
江波戸ねね
日矢の中また一閃す白鶺鴒
原田達夫
秋の蝶目玉模様の羽根休め
坂場章子
えのき茸干せば陽の香の糸屑に
奥井あき
夜業の灯仮の庁舎に煌めけり
西村とうじ
さりげなく若き女将の赤い羽根
加藤廣子


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