鴫

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令和元年12月号より
代表近詠
次の章
橋道子
榠櫨の実空張り詰めてはりつめて
雑然を 乱国(らんごく) と言ふ柿の里
勘狂ふかりがね寒き川に出て
秋うらら天津飯のふは卵
台風裡いちいち使ふ糸通し
ゆく秋の森を離さぬ風の音
風狂のかたち芒の揺れどほし
微笑みのやうな花束秋ゆふべ
つつしんで花束飾るあと夜長
朝露を踏んで始まる次の章
当月集より

二重丸の体調に覚め草ひばり
山ア靖子
老人の湯中り胡坐三日の月
荒井和昭
八月の覚悟のひとつ髪を切る
田村園子
生垣のまつすぐ続く野分跡
田令子
敬老日翁おうなの地獄耳
加藤峰子
秋の暮素手に鸚鵡を渡さるる
相良牧人
白露かなティッシュにありぬ縦と横
荒木 甫
つくつくし調子つぱづれの落ち入るる
石田きよし
つづら折澄む水音を下に聞き
成田美代
生月を疲れにつかれ八月尽
山口ひろよ
臥せ稲を刈る機械音かろからず
中山皓雪
夕顔の実のてらてらと横たはる
箕輪カオル
警報の英字テロップ秋出水
平野みち代
京都より「こだま」で帰京涼新た
甕 秀麿
高原の空あつけらかんと女郎花
宇都宮敦子
ホッピーの泡のつぶやき秋の暮
山本無蓋
秋暑し物言ふやうに吠える犬
坂場章子
重陽の日の夕焼に身を焦がす
田原陽子
熱き骨抱ふ弟秋の雨
数長藤代
羽抜鶏若沖の赤まとふまで
原田達夫
影作るものに走りて蜥蜴の尾
笠井敦子
草叢の男の子の奇声野分晴
田部井幸枝

寒麦集より

武骨ぶりなり和南瓜の佇まひ
松林依子
爽やかに刃を当てる駒師かな
西村とうじ
理髪師の走り鋏の秋の声
足立良雄
被災せし犬を預り星月夜
三木千代
秋澄むや漫ろにめぐる合羽橋
藤沢秀永
折り折りに母には嘘を鳳仙花
小宮智美
籾殻焼く煙の向かふ飛行場
鎌田光恵
近く来て寄れぬふる里柿赤し
みたにきみ
コンバインの音高々と夜刈りかな
山本久江
新涼や瀬音の響く旅一夜
柴田歌子

羽音抄

苦瓜のだいだい色の叫びかな
石田きよし
木洩れ日のやう妻を染む今日の月
原田達夫
晩夏光猫の骨壺湯呑ほど
田部井幸枝
知恵の無き三人寄りて酌む新酒
和田紀夫
勾玉のかたちに曲る名残茄子
江澤弘子
秋の空飛び出す妻はデパ地下へ
濱上こういち
種茄子の横座りめく肥りやう
山内洋光
拍手のこだま遠流の島の秋
来海雅子
海づたひ青烏瓜ふくらめり
鎌田光恵
いわし雲いつしか人は中空へ
藤沢秀永
引く波に砂のつぶやき秋夕焼
佐藤晶子
かづら橋渡りて祖谷のましら酒
木澤惠司
下戸二人顔を見合はす月見酒
中下澄江
こほろぎや黙りこくつて二人飯
中島芳郎
蔦紅葉火の見櫓を這ひ上がり
塙 貞子
鰯雲吾の直球に夫変化球
加藤東風
ダイビング刃のごとく着水す
今井忠夫
色鳥の恵とゞくべし被災地へ
川瀬 康
猛暑なかそつぽむく子に送金す
中村明子
友逝くや逝かぬが寄りて温め酒
近澤 宏


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