鴫

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令和元年5月号より
代表近詠
橋道子
水ぬるむ椎の葉陰の暗がりも
暗号のやうにぽつぽつ落椿
昆布豆を煮るこれしきの春の風邪
鷹鳩と化す日を医師の前にをり
立ちなほる茎を応援シクラメン
学校の左右コンビニ桜東風
浮き沈む初緤の黄のあはきこと
無地といふしたたかな柄春ショール
追伸を重ねて足らず朧月
現し世の舵切る時か春の雷
当月集より

二月来る水は明るさのせてくる
山ア靖子
田の神の降りし駅舎の雪ねぶり
荒井和昭
白鳥の群像劇をまのあたり
田村園子
春の雪霧笛真近く響きけり
田令子
師の句碑の視野にたゆたふ春の鴨
加藤峰子
立春や傘寿に一つ歳加ふ
相良牧人
枯欅沼風渡る葛飾野
荒木 甫
暮るる庭灯すふたつの木守柚子
石田きよし
雪折れの樹にナンバーも寄生木も
成田美代
薄氷の人恋ふほどに重なりぬ
山口ひろよ
二月はや夢野へ友は旅立ちぬ
中山皓雪
ものの芽や長々坂の尖り山
箕輪カオル
寒禽の群れ翔つ羽音大欅
平野みち代
凍返る広報小さし北方領土の日
甕 秀麿
そこはかと獣のにほひ探梅行
宇都宮敦子
川床の雪解けの水の穿つ痕
山本無蓋
着膨れの色とりどりに太極拳
坂場章子
寒紅を選ぶ手の甲染め乍ら
田原陽子
初雪の湿りはつかに二月入
数長藤代
着膨れて小銭あつちにもこつちにも
原田達夫
吹き止みて冬三日月の鎌の切れ
笠井敦子
改めていい声笑顔春立つ日
田部井幸枝

寒麦集より

寒行の百僧百の下駄の音
奥井あき
湖北より越へ深雪の鉄路かな
木澤惠司
安産の御守り揺れて春立てり
和田紀夫
春の野の小便小僧老いにけり
中島芳郎
ずつしりと綿の布団の生き心地
松林依子
舞ひ上り摩天楼へと春の雪
藤沢秀永
処方薬丁寧に飲む二月かな
中下澄江
小正月グレイヘアを褒めてやる
村 卯
梅日和アスレチックを試しけり
鎌田光恵
リハビリとは夢を編むこと梅真白
江澤弘子

羽音抄

出羽晴や水追ひ立てて泥鰌掘る
奥井あき
裸木の空ぐらつかせ雀群る
鎌田光恵
霰打つウインドー暗き銃砲店
宇都宮敦子
春愁を巻き込んでゐる玉子焼
平野みち代
一水のこゑ洩れゐたる焼野かな
箕輪カオル
路上絵を落葉のひとり遊びかな
相良牧人
退屈な暮し一喝春の雪
安井和恵
はやり風邪隔離の部屋にミレーの絵
柴田歌子
後悔も俗世の糧ぞ下萌ゆる
藤沢秀永
春の雲はぐるるといふ気ままかな
木澤惠司
空はうすずみ東都の春は肌の色
原田達夫
うとうととチューリップの芽揃ひけり
田令子
叱られし子を呼び入れて春炬燵
山内洋光
春一番帰宅の妻は風を脱ぐ
鈴木征四
降る雪の手頃が父の里自慢
島田喜郎
饒舌に無言で答ふ蜆汁
小宮智美
先頭を春野へ進む理科教師
森しげる
けん玉の剣に玉剌す春麗
田中裕一
意志硬き受験子親の肩貶す
澤田美佐子
相席の訛り福島牡丹鍋
野口和子


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