鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

平成31年2月号より
代表近詠
寸止め
橋道子
石に色貰ひし蜥蜴眼を宙に
茸ピザ血よりも水の濃き仲間
柳散る城下名残の紙問屋
北風に入れ替る夜の袖机
光呼び込むため街路裸木に
枯園に眠るライオン頭を腕に
寸止めの言葉を包む革コート
形見分け済み全開の冬座敷
幼児椅子買ふにはじまる年用意
書けば迷ふ書かねば虚し石蕗明り
当月集より

膕を伸ばしのばして冬に入る
山ア靖子
萱束を担ふ男の埃かな
荒井和昭
立ち直るとは風折れの秋桜
田村園子
蔦紅葉色を変へずに舞ひにけり
田令子
冬滝壺再起のしぶき真白なり
加藤峰子
埋火や築百年の太柱
相良牧人
身を十字壁に張り付く秋あかね
荒木 甫
枯芙蓉生れては消ゆる未来かな
石田きよし
行く秋の女遍路の声低し
成田美代
苔むせる墓碑なぎ倒し野分晴
山口ひろよ
黒門の扁額ひかる石蕗の花
中山皓雪
まぎれなく日差しの香る花梨の実
箕輪カオル
知らぬ児に返す挨拶檀の実
平野みち代
人厭ふ人らに十月桜かな
甕 秀麿
伊吹嶺に雲厚き日や晩稲刈る
宇都宮敦子
冬ざれの湯治場子規のごとく臥し
山本無蓋
出遅れてひとり初冬のモノレール
坂場章子
今生の紅葉に染みて深眠り
田原陽子
行く秋の老い渾身の打球音
数長藤代
熊手市白熱球に限るべし
原田達夫
鉦叩一息入れてゐる模様
笠井敦子
線香の未だ漂ふ初時雨
田部井幸枝
紅葉且つ散り黒門にひとを待つ
齋藤厚子

寒麦集より

鵙鳴けりかつて一揆のありし村
和田紀夫
奉納や出羽新藁の大わらぢ
村 卯
小春日や猫と遠くを見てをりぬ
濱上こういち
日記買ふ明日の予定を書きたくて
立花光夫
冬帽の行きつくところ赤提灯
中島芳郎
着ぶくれて満員電車に突進す
西村将昭
本を捨てスマホをすてて蛇穴に
木澤惠司
神無月奇岩霊洞羅漢佛
柴田歌子
高跳びの背反りかへる秋収め
鎌田光恵
木の葉雨喪中葉書の届く午後
西嶋久美子

羽音抄

行く秋の午後の陽射しは苺ジャム
田令子
たたみくる風の肌理なるいわしぐも
箕輪カオル
菊枕遠く遠くに皆の居り
遠山みち子
変はりなき日々の変はり目小夜時雨
成田美代
船をこぐ妻に勤労感謝の日
濱上こういち
山茶花の散りしく駅や縄電車
中山皓雪
本を閉ぢ花野の木偶となりにけり
木澤惠司
大根を運ぶに坂を叱りをり
鎌田光恵
猿酒やおつぱい山に日の当たり
渥美一志
色なきを色と虫寄る花八つ手
荒木 甫
厚物の一花も乱れなき菓子舗
宇都宮敦子
吾が墓に向き合ふ紅葉散りしきる
石田きよし
小春日や秋葉原にて真空管
宮ア根
揺り椅子にムーミンママの毛糸編む
平野みち代
自転車の鍵に鈴足す神の留守
奥井あき
囁きは散る順決めてゐる木の葉
田部井幸枝
鴨川の橋の上なる流れ星
三木千代
小春日を縫ひ込みながら釦付け
森 しげる
舫ひ舟に淦汲む人や小六月
中村久一
勾玉の光二個入り落花生
勝山 信


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved