鴫

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平成30年12月号より
代表近詠
略図
橋道子
露踏んで金色堂へ浅き階
秋風や牛すぢ入りの煎餅汁
秋光を織り込んでゆく川の幅
略図には無し松の木も秋風も
うつそりとけぶるや雨意の泡立草
秋薔薇や雨厭ふひと好む吾
ねこじやらし大き組織を知らぬまま
饒舌を悔いつつ帰る十三夜
ハロウィンの子ら去り釣瓶落しかな
音なき音色なき色の秋日差
当月集より

ひと筆にのせるひと文字雲は秋
山ア靖子
無駄蔓を鎌で搔き切る放生会
荒井和昭
浮くものを泛べて山の水澄めり
田村園子
台風過結び目のある掛饂飩
田令子
竹林の爽気に開ける東窓
加藤峰子
いつの間にか顔触れ揃ふ渡り鳥
相良牧人
つれあひにひとこゑ余し秋の蟬
荒木 甫
平成の恩賜公園虫しぐれ
石田きよし
とんぼ群る石の窪みに雨残り
成田美代
滝として直下を落つる瀬の覚悟
山口ひろよ
樹も風も人も黙して秋暑し
中山皓雪
藤は実に羊やんはり鳴きゐたる
箕輪カオル
甲子園から終戦の日のサイレン
平野みち代
オカリナの色なき風の中にかな
甕 秀麿
烏瓜引く荒草に靴沈め
宇都宮敦子
灯台の明り一筋鳥渡る
山本無蓋
秋晴るる病臥の犬のシーツ干し
坂場章子
新走り背筋正して試飲せり
田原陽子
ゆつくり押さる輪踊りの車椅子
数長藤代
木洩れ日の揺れに合ひたり秋風鈴
原田達夫
組の皿二枚に減らす涼新た
笠井敦子
待ち詫びし秋風痩身に痛し
田部井幸枝
館長の爪うつくしき秋の昼
齋藤厚子

寒麦集より

大花野どろぼう回りをしてをりぬ
和田紀夫
独り占め月の兎の滑り台
西嶋久美子
銀やんま雲の下ゆく雲速し
鎌田光恵
投入れの枝もの秋の風物詩
来海雅子
薄もみぢ陽明門の異邦人
塙 貞子
秋扇小町の放つ変化球
藤沢秀永
をりふしや土手一面の曼珠沙華
堀岡せつこ
悪友の残暑見舞や死ぬな!とぞ
中島芳郎
運動会組体操の無重力
三木千代
ジンジャー咲くだれかれの顔似たるかな
中下澄江

羽音抄

縋るものなければ這ひて葛の花
甕 秀麿
鳥渡る君から僕が見えますか
山本無蓋
秋水に浸せば指の広がりぬ
西村将昭
とんばうの止まりし人の閑かなり
石田きよし
毒茸と言はれのびのび増えてをり
宇都宮敦子
一畳に足る身や桔梗ふくらめり
奥井あき
秋さうび思ひ出すかに匂ふ午後
山口ひろよ
嘘ついて気管の詰まる秋扇
齋藤厚子
ひよんの実を薬包みに貰ひたる
五十嵐紀子
鰯雲身幅に開けてベランダへ
成田美代
新米の雲湧くごとく炊き上る
相良牧人
一人とはこんなもの紫蘇の実しごく
中下澄江
いくたびのカーテンコール稲の夫
山本久江
襟裏へ付け直す癖赤い羽根
西村とうじ
邯鄲のかごに添へらる虫めがね
松林依子
薄絹の秋気をまとふ入日かな
来海雅子
純正の白雲はしる野分あと
藤沢秀永
紅淡し夕べを被る鶏頭花
青木ちづる
訳付けて点字短冊星まつり
三木千代
いさぎよく水天をけり滝壺へ
森田啓子


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