鴫

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平成30年5月号より
代表近詠
春の星
橋道子
太陽の在処うすうす三月野
桃の花ケアーハウスの美容室
注ぐ湯の捩れつほぐす桜漬
納まりし函の闇にも雛遠目
意に添へぬ気まづさに巻く春ショール
剽軽な顔の自動車葱坊主
春しぐれ四谷市ヶ谷坂どころ
画鋲置くやうに高層春灯す
鳥潜る桜甘いか薄味か
ふと乗りし船の長途に春の星
当月集より

春よ来いベッドに吊す守り鈴
山ア靖子
氷瀑の芯の水音ひたかくす
荒井和昭
動くとも見えぬ凍蝶掃き残す
田村園子
月食の赤銅色に冬惜む
田令子
風韻の木の芽は紅をきは立たす
加藤峰子
ナンバーを振られ裸木戸緊張す
相良牧人
「草枕」時に音読春を待つ
荒木 甫
あかときの日矢を返して梅ひらく
石田きよし
風音のわたる背山や寒明ける
成田美代
春光の人間ドック待つベンチ
山口ひろよ
春寒や握り返さぬ手を握る
中山皓雪
粗筵を敷かれてゐたり春の泥
箕輪カオル
手袋の落ちて鍵盤叩くごと
平野みち代
春光を混ぜてスクランブルエッグ
甕 秀麿
椀盛りの冬の虎魚の薄にごり
宇都宮敦子
流氷や終着駅を旅立てり
山本無蓋
梅東風や大鐘吊しある札所
坂場章子
断ち切れぬ昭和への思慕春の雪
田原陽子
春を待つ仏花の赤をためらはず
数長藤代
山峽を来る風花の早さかな
原田達夫
底冷えの仏像館に靴脱いで
笠井敦子
女ごゑ長閑に長しスピーカー
田部井幸枝
豆撒のまめの残され車椅子
齋藤厚子

寒麦集より

外套の右の袖から手をとほす
濱上こういち
春の星新幹線は走るバー
木澤惠司
春立ちてより認むる悔み状
松林依子
ひと息が七色になるしやぼん玉
佐藤晶子
襟巻の顔半分へ目礼す
佐々木秀子
満行の父へのど飴黄水仙
奥井あき
鬼の棲む腹の奥底年の豆
足立良雄
探梅の行き着くところ海匂ふ
和田紀夫
輝ける百円玉の福袋
大島節子
児童の名一鉢ごとに桜草
立花光夫

羽音抄

きらきらと骨組みの無き薄氷
加藤峰子
鳩群れて胸に冬日を充電す
奥井あき
声たてぬ春告鳥を日のつつむ
鎌田光恵
摩り洗ふ手窪浅蜊の砂の音
山口ひろよ
リクエストされて再度の福は内
濱上こういち
仕立屋でごはすと笑まふ針供養
藤沢秀永
雪達磨考へ込んで融けにけり
相良牧人
雪残る中庭見せて絵本カフェ
箕輪カオル
引きこもる部屋なきころの火鉢かな
松林依子
待春の背中合せの背くらべ
平野みち代
近き子と遠き子のあり梅ひらく
石田きよし
春よ来い早く来いてふ手話習ふ
齋藤厚子
大仰に逃げる園長鬼やらひ
安井和恵
暖かや車夫の英語のブロークン
木澤惠司
半歩づつ引く波際や春浅し
村 卯
何でもと言ひつつ栄螺注文す
宮ア根
早春や雨の軽さを駆け抜けり
青木ちづる
麦踏の極意ぺしやんこまで踏めと
森 しげる
蕗味噌や客の連れ来る夜の雨
堀岡せつこ
俊寛のことなど都忘れ買ふ
赤津義彦


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