鴫

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平成30年2月号より
代表近詠
冬青空
橋道子
花殻を除くも仕事苑小春
前開けて着る 流行 ファッション のコートかな
聖樹に灯山高帽のチャップリン
見当識くるふ師走の繁華街
泳ぐかに冬青空の下をゆく
空風や水面網目にささら立つ
雪吊をかき鳴らしたる女神の手
博物館のやうな斎場山眠る
喪ごころの去らぬ湯豆腐掬ひけり
狐火に韋駄天走り追ひつけず
当月集より

横殴りの雪来て屋台の固き椅子
中江月鈴子
貝雑炊父のこゑ在る夜となりぬ
山ア靖子
新藁の香に充ちみちて農具小屋
荒井和昭
境内や競ふ千万輪の菊
田村園子
午後の日や名の灯籠に落葉敷く
田令子
冬ばらを剪るに遺愛の鋏もて
加藤峰子
文化の日どれも干涸びチューブ楜
相良牧人
秋の蚊の手強き傳兵衛記念館
荒木 甫
稲妻や頼りになるか核の傘
石田きよし
粗熱を取るかに揺れて吾亦紅
成田美代
鶴首にまそほの薄三筋ほど
山口ひろよ
火の用心こころの用心父の忌来
中山皓雪
冬のばら園に日の差す潦
箕輪カオル
腰下ろす石に温みや鵙日和
平野みち代
鵙猛るムンクの叫びとはこんな
甕 秀麿
十三夜金を沈めし漆箱
宇都宮敦子
鴨の陣群れを外るるへそ曲がり
山本無蓋
奥入瀬の紅葉語りし妣の眼よ
田原陽子
雨たばしる台風圏の天守閣
数長藤代
窓越しに犬と見てゐる飛ぶ木の葉
原田達夫
安穏といかぬ遊行期根深汁
笠井敦子
たたみ皺伸ばすもの洗ふ小春凪
田部井幸枝
どこまでも声の透りて菊日和
齋藤厚子

寒麦集より

落葉搔き落葉追ひかけゐたりけり
鎌田光恵
出かけるに仕込み過ぎたるおでん鍋
坂場章子
野分中新撰組の陣屋跡
宮ア根
寒の入り夕日を配る新聞屋
別人蓑虫
化石てふメタセコイアの枯葉かな
村 卯
満月や毒もて危めたき女
木澤惠司
実南天守り袋に母の骨
足立良雄
格子窓くれなゐに染め柿吊るす
藤沢秀永
神の留守人間ドックの案内来る
安井和恵
小さく反る小さき石橋花八手
山本久江

羽音抄

銀杏干す核の文字ある新聞紙
奥井あき
風の積む砂山とがる冬落暉
加藤峰子
胸うすき弥勒菩薩の冴ゆるなり
足立良雄
湾ひとつ占めて斉一牡蠣筏
山口ひろよ
悩みなき顔写しけり冬の池
宮ア根
言の葉を焼べ足すやうに落葉焚
相良牧人
白むまで小貝揉みたる冬の波
宇都宮敦子
マスクしてお伽のくにの召使
齋藤厚子
木枯の吹き余したる昼の月
荒木 甫
病む姉に頭撫ぜらる日向ぼこ
齊藤哲子
飛び石のひとつぐらつく神の留守
平野みち代
いささかの闘志を杖に冬初め
中島芳郎
千草の実ズボンに付けて大志あり
中山皓雪
妻の眼の内に吾をり石蕗の花
山本無蓋
椋鳥群れシナリオのなきマスゲーム
西村将昭
飛ん来て止まつたやうな冬ざくら
田部井幸枝
湯上りのアルプスの水寒の水
佐々木秀子
縄文の深き闇知る凍て星は
森 しげる
都鳥なんの序列も無かりけり
杉田 杏
花八手反射してゐる捨て鏡
鈴木征四


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