Shigi-haikukai
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平成29年11月号より
代表近詠
月見豆
橋道子
雲迅し大地に秋を撒きながら
母の忌を貝風鈴の鳴るカフェに
鶺鴒の流れ走りと言ふべかり
どれよりも南天の葉に露燥ぐ
一粒は葉先にすがり露の玉
冬瓜のごろ寝をよぎる照り翳り
月見豆騙され甲斐のある言葉
父母もかく吾を案ぜしか烏瓜
いつまでも読める眼を盆の月
紐引いて秋灯を消す旅ごこち
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当月集より
ちちはは無き低きぬれ縁くつわむし
中江月鈴子
口腔の渇きに目覚む原爆忌
山ア靖子
森の上の別れ鴉の騒ぎかな
荒井和昭
山車を曳く稚児一斉に水飲めり
田村園子
夕まぢか虹の真下を通りゆく
田令子
暁のかなかな聴きに行つたきり
加藤峰子
気散じの万歩を超えし稲田径
相良牧人
色さらに恩寵のごと百日紅
荒木 甫
もうすぐに滝となる水知らぬふり
石田きよし
蓑虫の吹かれ上手といふ矜持
成田美代
納涼床てんやわんやよ不意の雨
山口ひろよ
橋桁に合掌の波八月来
中山皓雪
エンジンを優しく使ふ蓮見舟
箕輪カオル
銀河濃し日本列島震へ癖
平野みち代
夕星の百は数へり稲の花
甕 秀麿
観音の千の手の影広島忌
宇都宮敦子
万緑や恵比寿を祀る沖小島
山本無蓋
朝顔や普通のことの出来る幸
田原陽子
ひろひろと水面膨るる川花火
数長藤代
熊ン蟬しゆあしゆあしゆあとしやつと尿
原田達夫
泡雪羹固まるまでの草むしり
笠井敦子
朝顔の明るきブルー誕生日
田部井幸枝
炎天下出会ひ頭を笑ひ出す
齋藤厚子
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寒麦集より
建築士見た目綺麗に西瓜切る
濱上こういち
向日葵の空が眠たい午後三時
江澤弘子
点眼の逸れる一滴敗戦忌
坂場章子
短夜の重しと思ふ怪我の腕
佐々木秀子
蛍火のONのためいきOFFの黙
木澤惠司
夏帽子忘れポンポンダリヤかな
杉田 杏
出合ひけり中仙道の冷し酒
藤沢秀永
夫も影我も影なり揚花火
岩本紀子
参道の狐面売るくずもち屋
松林依子
万歳の腕ぷくぷくや昼寝の子
安井和恵
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羽音抄
木戸門の風鈴直す警備員
箕輪カオル
生き急ぐひとつの形蟬時雨
濱上こういち
かなかなやあまたの書類書き寡婦に
加藤峰子
砂浜に紅の継ぎ当て天草干す
鎌田光恵
星草や眼窩を浸す水明り
山口ひろよ
姉ちやんと従妹を呼べり夕化粧
足立良雄
村中が菊を育てて甘酸つぱい
中山皓雪
愚老らの昭和平成蟬しぐれ
荒木 甫
朝刊のコラムに師の句涼新た
坂場章子
点描の白の限りを花木槿
相良牧人
鹿の子鳴くふいに纏ひぬひだる神
齊藤哲子
月涼し父は黄泉路へ吾は家路
石田きよし
直球のやうな漢と濁酒酌む
藤沢秀永
金魚鉢の和平ぐらゐは守りたし
藤兼静子
蟬時雨止まりて我に返りけり
青山正生
風鈴や海のにほひの乱れ箱
木澤惠司
黒揚羽羽音に開かぬ自動ドア
奥井あき
筒抜けに風を遊ばす夏座敷
伍島 繁
新涼の朝餉や河馬の如く食む
蒲野哲雄
葛桜銘銘皿の波模様
加藤東風
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