鴫

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平成29年8月号より
選者近詠
梅雨きざす
橋道子
新しきパソコンは赤梅雨きざす
十薬の白厚くなる降りはじめ
そびやかや忍び返しの夏館
ちよこなんの蜥蜴と気脈通じたる
透く水に蜷の逡巡つまびらか
苔青し結界石に綱十字
青葉潮ねころぶやうに山いくつ
漁師風刺身ぶあつし風青し
海の色変はるからくり海猫に聞く
突堤の日傘のつひに振り向かず
当月集より

垣突き出る白紫陽花に夕日射す
中江月鈴子
母の日の明けの遠吠え切にかな
山ア靖子
巌檜葉の子嚢穂に水たつぷりと
荒井和昭
緞帳と見紛ふ藤の懸け造り
田村園子
若葉山から歌声の届きけり
田令子
早苗田を揺さぶりながら汽車の来る
加藤峰子
今年また使徒のごとくに燕来る
相良牧人
夏立つや蹲踞開脚前身屈
荒木 甫
大阪はほなさいならと西日入る
石田きよし
行く春のスマホに覗く潮見表
成田美代
荒波の能登茫茫と夕焼けて
山口ひろよ
憲法の話とくとく冷奴
中山皓雪
初夏の海を見てをり観覧車
箕輪カオル
お手玉のやうに手秤春キャベツ
平野みち代
陽炎や旅券をかざす死の商人
甕 秀麿
鱧の皮下戸疎まれてをりにけり
宇都宮敦子
忘れゐし恋思ひ出す朝の虹
山本無蓋
初蛙陶器のやうに掌に坐る
田原陽子
子供の日夫の血縁にぎやかに
数長藤代
夕長し欅の花の降り止まず
原田達夫
蝌蚪に足郷関出るに振り向かず
笠井敦子
風薫る湖畔のガレのガラス展
田部井幸枝
はつなつや飴ころがして読む駅名
齋藤厚子

寒麦集より

衣更へてフジタの裸婦のゐる杜へ
藤沢秀永
雲梯の児らの臍出し若葉風
木澤惠司
シャンソンをイヤホンで聞く冷房車
足立良雄
献体も思案のひとつ餘花の雨
安井和恵
薫風や草を巻きとる象の鼻
坂場章子
曲つたこと嫌ひな人の植田かな
濱上こういち
一軒を丸呑みしたる茂りかな
西村とうじ
包丁は上総仕込みよ鰺たたく
江澤弘子
径を問ふ少女の敬語夏帽子
青木ちづる
自販機の音の響きや朧の夜
杉田 杏

羽音抄

住み飽きぬために買ひたる青簾
加藤峰子
 あおに
 
小谷より青鬼へ嫁ぎ檜笠
山口ひろよ
露天湯に藤の瓔珞揺れやまず
相良牧人
吹流し小高く一村一苗字
荒木 甫
なみなみと首の座らぬ植田かな
伍島 繁
青岬洗ひざらしの風統べる
江澤弘子
顔色は窺へぬなり射干明かり
宮ア根
蜥蜴奔るよ人気なき販売機
原田達夫
いささかの自信の集ふ鯉のぼり
石田きよし
鮭缶をあけて二人の昭和の日
山内洋光
夕蛙がぎぐげご行鳴きいくさ
山本久江
腹太く風呑む鯉の泳ぐ空
山本無蓋
そら豆の真綿ぐるみのしやくれ顔
奥井あき
桜蘂降る奥の細道むすびの地
木澤惠司
おいしいものだけのしりとり子供の日
島田喜郎
初夏や鏡に映すうらおもて
大島節子
失笑も大泣きもなく春終る
青山正生
母の日の父の孤独や五十年
三木千代
地下鉄の四角い出口緑さす
安井和恵
花水木白しネクタイ久し振り
立花光夫


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