鴫

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平成29年4月号より
選者近詠
初期化
橋道子
人待たす臘梅に顔うづめゐて
匙に乗る顔の逆さま春立てり
梅東風や顔ぶれといふ足取りに
書き写す師の師の句集春の星
水音のあやしてゐたる名草の芽
遠くまでよく見ゆる日の蘆の角
鏡中に晩年の母亀鳴けり
騙されしやうに銀座に春の雪
演舞場より流れ出て人人おぼろ
朝寝せりわたしを初期化するために
当月集より

限られた時間の中に花菜摘む
中江月鈴子
三日月の黄金の皿年改まる
山ア靖子
寒鮒を焦がして干せる軒目笊
荒井和昭
食卓に二人向き合ふ四日かな
田村園子
寒の雨ガラスの曇るワインバー
田令子
まるまると落ちる年初の砂時計
加藤峰子
築年を見透かしてをり嫁が君
相良牧人
舞ふ雪のいまもむかしもてのひらを
荒木 甫
最後には一人の覚悟初鏡
石田きよし
寒晴や風へ真向かふ幹の色
成田美代
発つ刹那葉を撓らせて冬の蝶
山口ひろよ
すずなすずしろ一病もちて年を取る
中山皓雪
寒夕焼迎へが来ても帰らぬ子
箕輪カオル
電飾のシャンパン色となる聖夜
平野みち代
物忘れして身軽な旅を初暦
甕 秀麿
米穀店錢屋の倉庫注連飾る
宇都宮敦子
梅祭提灯ほのと賑やかし
山本無蓋
初旅の海を目指せる一輛車
田原陽子
初御空常の遠富士常の川
数長藤代
アフリカンブーツオーバーみなピンク
原田達夫
うぶすなは心のよりど寒椿
笠井敦子
此の年を頼み込み候初鏡
田部井幸枝
初電話転びしことをことこまか
齋藤厚子

寒麦集より

指切りの少女は婆に賀状来る
足立良雄
一人では出来ぬ団欒切山椒
宮ア根
街角の杖曳く己が初鏡
中島芳郎
消しゴムの消しきれぬ跡古日記
濱上こういち
低き鼻少しつまみて初鏡
山内洋光
餅花のもちの重さに撓みをり
山本久江
玉石の川底に透く御慶かな
来海雅子
待春や餌台に置くパンの耳
坂場章子
炎のごとき水平線や初日の出
江澤弘子
水仙の残り香のする昇降機
遠山みち子

羽音抄

ロボットの悔ゆるを知らず年の暮
甕 秀麿
炭火匂ひて先生み銚釐かな
宇都宮敦子
普段着の母ゐて万事今朝の春
成田美代
水上バスに押し戻さるる浮寝鳥
松林依子
太古より眠らぬ地球去年今年
木澤惠司
鴨の夢首さし入れて羽の中
奥井あき
去年今年さざ波にあるたづきの灯
原田達夫
日脚伸ぶ生命線も少し伸ぶ
中山皓雪
初明り誰も起こさぬ島の朝
山口ひろよ
おつ切り込み炉話に囲まれてをり
箕輪カオル
「失われた時を求めて」去年今年
足立良雄
買収に応じぬ老の冬田打
加藤峰子
目元まで羽交に沈み浮寝鳥
坂場章子
而して入歯の重き初笑ひ
田部井幸枝
小寒の五徳に弛み無かりけり
山本久江
真夜が好き独りなほ好き葛湯吹く
五十嵐紀子
初夢は誰にも言へぬウフフフフ
宮ア根
初夢の覚めて泪のわけ知れず
和田紀夫
丸餅と四角のもちの夫婦かな
濱上こういち
つくづくと吾は雪の子二・二六
佐藤佐津


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