鴫

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平成29年3月号より
選者近詠
常磐木
橋道子
鳥の餌の果実に沈み冬の蟻
学寮とおぼしき構へ冬柏
歳晩の灯やファミレスに隣る塾
死者に死の無くてくれなゐ冬薔薇
常磐木は父母のいろ初雀
立錐の余地に畏み初社
おのが糞投ぐる猿ゐて冬あたたか
文書けば散らかし初めとなる三日
人日のポテトサラダを丸く盛る
着ぶくれて己れ追ひつむるに甘し
当月集より

潮風の匂ひの中の八重水仙
中江月鈴子
太陽に抱かれるための毛布干す
山ア靖子
耳たぼに思はず触れる葱深汁
荒井和昭
小春日や双子の眠る乳母車
田村園子
灯台の下群れなせる冬の波
田令子
川涸れて石の大小屹立す
加藤峰子
捨てマスク何か叫んでゐるやうな
相良牧人
椋鳥の群れ降りむれ発ちむれ降りぬ
荒木 甫
試みる舌頭五転翁の日
石田きよし
群青を真中に雪の沼の暮れ
成田美代
白鳥の風の挽歌に震ふ羽
山口ひろよ
人波に遅速ありけり社会鍋
中山皓雪
ピロティに赤き絨毯十二月
箕輪カオル
お手玉に小鈴しのばす一葉忌
平野みち代
山茶花の諄々諭すやう散りぬ
甕 秀麿
黄泉までは届かぬものか羽根布団
田原陽子
八度目の施術空しく冬の星
数長藤代
冬霧や街海となり島となり
原田達夫
乱世を遠くに置きて浮寝鳥
笠井敦子
冬落暉屋根越しに見ゆ千葉の海
山本無蓋
正先の冬灯まで車椅子
田部井幸枝
家中の障子と云へど二枚きり
齋藤厚子

寒麦集より

何も彼も玉響なりし古日記
宮ア根
小鉢皿いろいろ替へて牡蠣尽くし
堀岡せつこ
肩並べ師走の街に出陣す
大島節子
着ぶくれてやつぱりパンダから廻る
宇都宮敦子
三畳の城主独りの日向ぼこ
中島芳郎
街騒の我も過客よクリスマス
安井和恵
年忘れ県民歌もてお開きに
藤沢秀永
笹鳴に金の日差しの宿りをり
鎌田光恵
残業の子に冬至湯の柚子替ふる
齊藤哲子
産土の土間を大事にちちろ虫
三木千代

羽音抄

裸木の名札の騒ぐ夕まぐれ
加藤峰子
蔦枯れて蔵に屋号の現れし
三木千代
梢より生まれしやうな冬の星
西村将昭
キャンドルの隙間の闇にコート掛け
成田美代
煤払待ちて虚ろの仁王かな
藤沢秀永
良妻の味に悪妻大根煮る
中山皓雪
師の老ゆは江湖の習ひ寒椿
荒木 甫
マフラーの明るきところ胸元に
田令子
ゴスペルの揺れる乳房よ降誕祭
山口ひろよ
冬うららまして新聞休刊日
中島芳郎
雪晴れて嶺々一歩前へ出づ
甕 秀麿
冬の蠅後期高齢らしく搏つ
村 卯
虫歯あるかと鮟鱇の口覗く
平野みち代
稲荷から稲荷につづく冬田道
原田達夫
朴落葉牛の固めし塩の道
松林依子
地響も聞こゆる能登の鰤起し
安井和恵
茶の花や牛が大きな顔を出し
鎌田光恵
鯛焼の餡に注がる童の眼
橋信一
狐窓寝ころび仰ぐ冬銀河
堀岡せつ子
射干玉の茶碗を前に漱石忌
松平知代


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