鴫

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平成29年2月号より
選者近詠
瀧凍つる
橋道子
神留守の十指になじむ革鞄
水谺して折れ曲がる秋の瀧
澄む水を心に引きて歩むべし
山茶花やメールひとつに祖母となる
教へずも嬰は指吸ふ冬たんぽぽ
銀杏散る鶴瓶来るとふ御堂筋
マフラーの切先流しだふ屋かな
天王寺動物園二句
ライオンの寝顔平たし枯日向
小春日の猫になれざる虎の鬱
つうの織るごとく密かに瀧凍つる
当月集より

寄りかかる枯樹の幹の脈打てり
中江月鈴子
朴落葉思慮あるやうに坂下る
山ア靖子
潮焼けの声に指示さる火魚かな
荒井和昭
そぞろ寒この字毎回辞書頼り
田村園子
高原の駅に黄落頻りなる
田令子
柚子たわわ一本梁の旧居かな
加藤峰子
繕はぬ秋の蜘蛛の囲略図めく
相良牧人
ひよどりのひと声奔る朝の雨
荒木 甫
色なきを入れてわが家の風となる
石田きよし
掌に青き匂ひを残し大根抜く
成田美代
遠案山子未だ解かざる持久戦
山口ひろよ
老犬にあはせて歩む赤手套
中山皓雪
好きなものおのおの違ふおでん鍋
箕輪カオル
糸瓜棚律呼ぶ母の声のして
平野みち代
三山の競ふ三段紅葉かな
甕 秀麿
鴉にも正調音痴冬に入る
田原陽子
小劇場出し裏通り火恋し
数長藤代
清貧に生きてあれこれ年用意
佐藤山人
黍畑風過ぎてより騒ぐなり
原田達夫
庭師来て風邪ひきさうな庭となり
笠井敦子
古刹いま逆光に燃ゆ紅葉かな
山本無蓋
数珠玉採る一会の人の趣味へかな
田部井幸枝
こゑ低う畏まりたる菊人形
齋藤厚子

寒麦集より

途中下車まづは鰯の刺身など
来海雅子
妻は旅我はコンビニ関東煮
濱上こういち
一茶忌のひしひしと結ふ雪囲
宇都宮敦子
浮雲がきて洋梨の食べごろに
佐々木秀子
巡礼の道とや露の石畳
和田紀夫
隙間風三遊間を強襲す
足立良雄
夕されば影絵めきたるむく万羽
藤沢秀永
小六月ケーブルカーの小さき椅子
山本久江
冬満月鉈彫の眼の細きこと
木澤惠司
俯瞰図は曲線多し冬山河
江澤弘子

羽音抄

冬銀河木目渦巻く船箪笥
山本無蓋
土に還ることの始めの落葉踏む
荒木 甫
自転車でお化け達来る感謝祭
田令子
冬濤の異国生れのやんちやもの
西村将昭
露の夜のコロラトゥーラに耳輪揺れ
宇都宮敦子
鰭酒や倅が顔を利かす店
石田きよし
庖丁の峰の一打や冬に入る
相良牧人
小春日や出口の多きすべり台
坂場章子
水槽の中も朝寒老金魚
佐々木秀子
達磨の瞳びつくりのまま冬に入る
青木ちづる
乗り替への軽き別れに手套とる
遠山みち子
蔵よりも高き桐の木冬ざるる
山内洋光
冬に入る瀞は蒼さの淒みもて
齊藤哲子
渾身の乱切りなりぬ八頭
山本久江
秋天へ大波捉へ立つをとこ
来海雅子
エプロンにアイロン時雨心地なり
田部井幸枝
ロケット便らし種子島から安納藷
村 卯
川に映ゆもみぢ奥ゆき有りにけり
鎌田光恵
吾が影を攫ひゆくやう大枯野
斎藤房枝
湯たんぽの占める売場の広きこと
橋本孝子


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