鴫

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平成29年1月号より
選者近詠
木の実
橋道子
木の実落つ思ひあたるといふやうに
その卓が好きで寄る店秋ざくら
草紅葉卵の自動販売機
城のごと構ふる病舎野分晴れ
なかなかや病院食のとろろ汁
どことなくムーミンに似る榠櫨の実
長月の梢は影を重くせり
稲毛吟行三句
色変へぬ松のくねりも海名残
祠掃く前の一礼新松子
紅白のありてさびしき水引草
当月集より

けやき並木の明るくなりし神帰月
中江月鈴子
祖母に似て芋茎干しゐる長屋門
山ア靖子
青空を磨きぬきたる花薄
荒井和昭
レアメタル潜む海原銀河濃し
田村園子
空色のタオルを揃へ秋深む
田令子
告白の鼻濁音なり十三夜
加藤峰子
草の絮無垢の楼門過りけり
相良牧人
ためらうてひとつ手折りぬ曼珠沙華
荒木 甫
小鳥来る防空識別圏を来る
石田きよし
秋潮の今し遥かや二の鳥居
成田美代
ペポ南瓜程無く馬車に変はる頃
山口ひろよ
身に入むや西郷像を撮る異人
中山皓雪
爽やかや鉄塔つづく空の青
箕輪カオル
城山にもののふの声秋の声
平野みち代
高き家の低き家の影十三夜
甕 秀麿
雨意なれど月出る方のほの明し
田原陽子
去ぬ燕矢切の辻に勢揃ひ
数長藤代
あの頃の命つなぎの穭米
佐藤山人
来歴を語ることなく一葉かな
原田達夫
抗ふも鎌やはらかき子蟷螂
笠井敦子
ただいまと何時もの川に鴨来たる
山本無蓋
フレアースカート秋の渚のやうにかな
田部井幸枝
手まねきといふ大仰な芒原
齋藤厚子

寒麦集より

山祇の手籠を洩るる木の実かな
江澤弘子
栗拾ひ無口となりててんでんこ
宮ア根
無愛想な男の胸の赤い羽根
山内洋光
棚田畦桟敷となりぬ村芝居
鎌田光恵
病み呆けて医は仁術の新走
中島芳郎
光芒に目ん玉痛き秋夕焼
村 卯
選びては桜落葉を拾ひをり
森田尚宏
駅に吾を迎へ来し毋十三夜
松林依子
待宵や虫喰ひ痕の目立つ廊
来海雅子
吊橋の二つ続きぬ秋深し
木澤惠司

羽音抄

一匹となる鈴虫にいつもの餌
山口ひろよ
子供らの怒つた笑顔七五三
濱上こういち
水澄めり己の奥におのれをり
甕 秀麿
祝婚や日差しの中の椿の実
箕輪カオル
天高し反り身を競ふ鯱二頭
平野みち代
黒牛に知者の風格秋時雨
宇都宮敦子
赤とんぼ風に向かひて横すべり
森田尚宏
本日はとしよりの顔吊し柿
宮ア根
帽すこし浮かせて入るる秋の風
成田美代
確かむる仔山羊の角や小春なり
佐藤山人
不器用に煉瓦を重ね秋刀魚焼く
坂場章子
なにやらの片仮名の職小鳥来る
松林依子
秋風や重機のやうな保父の腕
鎌田光恵
賞品に幼虫もらふ秋まつり
五十嵐紀子
山栗の不揃ひを買ふ手間を買ふ
澤田美佐子
鵯の鳴く種も仕掛も無き声で
柴田歌子
紅玉はシャツでこすつて喰らふもの
森 しげる
拾はれぬ木の実の落ちる音高し
藤兼静子
一面の更地無月の底明り
蒲野哲雄
一葉の「十三夜」読む十三夜
塙 貞子


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