鴫

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平成28年7月号より
代表近詠
荷風忌
井上信子
白魚を盛りこぼしたる一人の朝
取皿に風入れてみる御忌も過ぎ
小高きに墓地残りをりクローバー
並木みち何か鳴いてをり朧
坂下る暮春の家並そして空
春園の入り口出口通り雨
荷風忌も過ぎしと思ふ夜の雨
選者近詠
秘話
橋道子
雨上る沙羅の芽吹は低きより
ひとりでに横向きに咲く八重椿
春灯し急階段の額縁屋
葉桜や散歩がてらのブックオフ
島いくつ誰が名付けしか月日貝
去る波は追はず吹かれて桜貝
ほんたうの秘話は秘のまま花の城
当月集より

春夕焼けの富士一日を締め括る
中江月鈴子
天界へきざはしなして夜の桜
山ア靖子
ききなしのの句集や朝寝せり
荒井和昭
とつおいつ進まぬ筆や膝毛布
風間史子
少年の帽子黄蝶を取り逃す
田村園子
満開を行く人びとのスローモーション
田令子
繚乱や桜まみれの肩車
加藤峰子
はくれんのいよいよ高き道しるべ
相良牧人
花に雨男に一献ありぬべし
荒木 甫
花ふぶき三音高き中国語
石田きよし
吹かれても絡むことなき藤の花
成田美代
佐保姫の昨夜に零せし青い花
山口ひろよ
天に星地に耕人や人は老ゆ
中山皓雪
きぶし咲く嘉納治五郎別荘跡
箕輪カオル
初音賜り三文の得となす
平野みち代
予測変換「は」に徘徊と万愚節
甕 秀麿
隣席の独活持つ人と語り合ふ
田原陽子
花三分迷子は家とアナウンス
数長藤代
刑明けしごと凍て滝の落ち始む
佐藤山人
木の芽山のかげの容にさざれ波
原田達夫
蝌蚪に足生えて村中動き出す
笠井敦子
切り岸の向かう棚引く花の雲
山本無蓋
うつすらと桃源郷に下り立ちぬ
田部井幸枝
日めくりの道説くことばあたたかし
齋藤厚子

寒麦集より

揺れながら夢を見てゐる花筏
江澤弘子
楼門に縁取られたる初桜
藤沢秀永
花散らし手の打ちやうもなかりけり
濱上こういち
ちと辛き地酒余さず井月忌
中島芳郎
覗き込む壺の来歴朧なり
足立良雄
畦塗つて近寄り難き顔となり
西村将昭
参道のうららか七味たうがらし
森田尚宏
手芸屋の軒にせはしき燕かな
鎌田光恵
花見人華人韓人印度人
村 卯
鰆の背沖の潮目の色残し
山内洋光

羽音抄

陽炎の向かふも同じ時流れ
成田美代
新らしき今を重ねて落椿
箕輪カオル
春雨の児の地上絵を消さぬほど
山本久江
蝶飛ぶや宙に鍵盤叩くごと
坂場章子
経文に句読点なき朧かな
足立良雄
花衣たのしきときは訛りけり
齋藤厚子
愚直にも紺を選りつぐ春の服
藤沢秀永
四月馬鹿たまに本心言うてみん
青山正生
椅子寄せてハードカバーを柿若葉
荒木 甫
固まつて真つ直に来る新社員
田令子
正面に大き島影春怒濤
和田紀夫
花衣母はいつもの納戸色
宮ア根
畦塗つてゴシック文字の田となりぬ
西村将昭
本が本つれ春暁をたゆたへり
松林依子
繕うて古巣選びし番鳥
山内洋光
春愁をリュックに詰めて山歩き
左京信雄
しやぼん玉にぶら下りゆく空の旅
藤兼静子
花盗人させてまで吾見舞はるる
村上すみ子
君待つと書かれし絵馬や花水木
杉田 杏
菜の花や膝より眠くなつてくる
関谷ひろ子


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