鴫

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平成28年6月号より
代表近詠
水草生ふ
井上信子
水草生ふ崖の下なる通学路
校庭はいま若葉風師は座さず
たんぽぽの花の座しつかりして来たる
たんぽぽの声ぽんぽんと夕間暮
恋猫のうしろ向きたる草の揺れ
十薬の花の眞白やながらへぬ
葉櫻や学生寮の灯りそむ
選者近詠
爆心地
橋道子
陽炎をやぶりてバスの来りけり
染工房いくつ育てし春の川
たたずめば隠り世めきて牡丹の芽
山襞の一つひとつの生む霞
ゴンドラをつらぬく初音島はるか
島青く海またあをくただ霞む
春の川かくも豊かに爆心地
当月集より

葉桜や思ひ出だけの鍾乳洞
中江月鈴子
名園の袖より入りぬしだれ梅
山ア靖子
よつたりに壺焼ひとつ切り分ける
荒井和昭
底抜けの楽天家より風邪貰ふ
風間史子
てのひらにたまゆら在りしうすごほり
田村園子
雪柳目指して渡る交差点
田令子
刃こぼれのやうに窪みて紙風船
加藤峰子
帰りなんいざ阿蘇の野焼といふからに
相良牧人
閏日の徳利一本ほどのこと
荒木 甫
ふところに原発抱き山笑ふ
石田きよし
なほ歩くためのしるべや春の雪
成田美代
梅園の名付けうべなふ橋五つ
山口ひろよ
東風吹かば木霊人霊動き出す
中山皓雪
糸柳めぐみの風は川面より
箕輪カオル
亡き人へ針千本としやぼん玉
平野みち代
春潮の引けば島への恋の道
甕 秀麿
太陽のあまねく日なり雛蔵ふ
田原陽子
初蝶の快晴の世をひとめぐり
数長藤代
春耕の景を矢狭間より覗く
佐藤山人
おばちやんのお喋りほどの揚雲雀
原田達夫
鳥帰る帰還叶はぬ町の上
笠井敦子
北上の桜幼児の歩みほど
山本無蓋
会ひたくば父母の守る雛の間
田部井幸枝
囀や黒き瞳のちひろの絵
齋藤厚子

寒麦集より

鞭声のはるかな河畔夕がすみ
藤沢秀永
上履を最後に包み卒業す
山内洋光
梅真白午後より風の出て来たる
青山正生
河津桜はなやぐ風のありにけり
山本久江
風生の鴬餅や買ひもして
森田尚宏
城下に枝ぶりの寂ぶ盆梅展
松林依子
なにくその精神の失せ残る鴨
宮ア根
海苔ひびの波を縫ひゆく手漕ぎ舟
鎌田光恵
澱みつつ夢を見てゐる花筏
江澤弘子
汚染土の袋幾重に花楓
三木千代

羽音抄

耕人の児を乗せ帰る猫車
平野みち代
木の芽風いつしか空の混み合へり
山本無蓋
弾むたび手に音を置き紙風船
坂場章子
春や図書吾をわれをと囁けり
石田きよし
しやぼん玉吹くさもやさしさうな風
箕輪カオル
病人は夜も病人春の星
島田喜郎
水門を桜堤へ水逸る
奥井あき
出る者は出払ひ昼の春炬燵
森田尚宏
大原や女院も摘みし白根草
宇都宮敦子
くろもじの花先頭に倣ひ撫づ
山□ひろよ
剌すといふ武器を捨てたり春の水
甕 秀麿
囀や海平らかに地獄あと
三木千代
卒業子万年筆のラブレター
村 卯
いつ死んでもなどと云ひつつ草だんご
山内洋光
春うららコッペパンあり購買部
宮ア根
空つぽになるまで笑ふ山わらふ
齋藤厚子
切れぎれに同じ顔見る春の夢
田中涼平
剪定のひとり見習ひと言ふ翁
五十嵐紀子
すかすかに空気溢るる春キャベツ
伍島 繁
陽炎ひておのれ骨太とぞ思ふ
加藤東風


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