鴫

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平成28年2月号より
代表近詠
寒晴
井上信子
寒晴や墓拭きにゆく二人して
冬の日をたつぷりに石閉づるなり
鵙寒し何も咲かない木が好きで
一日を冬日こもりに父の鵙
霜焼けを包みてやりしこと遥か
アノラックそれは誰かの脱け殼で
初東風の匂ひを誰に告げやらむ
選者近詠
因州箋
橋道子
声まろむ釣瓶落しを連れだてば
腰強き因州箋や火の恋し
吊橋の時雨心地となりにけり
家族歴さかのぼる旅冬菫
はるかなる時を縮めておでん鍋
アンデルセン公園二句
名にし負ぶメルヘンの園銀杏散る
しぐるるや木靴木の匙木のシャベル
当月集より

押し押され未来志向の初詣
中江月鈴子
甲州の大き星とぶ芋の秋
山ア靖子
枯芝に日向の匂ひ臥せにけり
荒井和昭
銀河より一粒降りて水面に輪
風間史子
ねこじやらし連れをくすぐるために抜く
田村園子
十一月空にソプラノ響きけり
田令子
晩餐のやうにざわつく芒原
加藤峰子
綿虫に先導さるる北ゲート
相良牧人
籠る火を耐へし窯跡黄白菊
荒木 甫
執刀医の自信にゆだぬ神無月
石田きよし
枯葦の乱れぬ高さ小糠雨
成田美代
鷲一羽ユーラシアへと続く崖
山口ひろよ
曇天を支へるならひ平和像
中山皓雪
一宿を秋田訛と牡蠣鍋と
箕輪カオル
秋草を刈るや学徒の日の過ぎる
田原陽子
秋まつり太字提灯古りにけり
数長藤代
少年のすこし依怙地に竜の玉
椿 和枝
横綱がごろり敗けたよ百匁柿
佐藤山人
秋草をこまめに訪ふてゐる小蜂
原田達夫
盛衰の容をまざに破蓮
笠井敦子
秋天にとどけと組める人の塔
山本無蓋
船橋のアンデルセン像小春凪
田部井幸枝
子供らの過ぎて顔出す冬の鯉
齋藤厚子

寒麦集より

囮鮭糸の限りを遡上せり
宇都宮敦子
さるぼぼをちよつとピンして神の留守
甕 秀麿
昼酒や隣家の紅葉借り申す
中島芳郎
行く先の定めあるかに木の実落つ
藤沢秀永
漣の小春語りといふべしや
平野みち代
立冬や予報通りの雨一と日
天野正子
最後ですと兄の新米届きけり
三木千代
長居して借りる時雨の男傘
齊藤哲子
ジャケットで反射炉火口覗きけり
村 卯
七五三泣くも笑ふもみな写し
安井和恵

羽音抄

川合ひの静脈めきて荻の声
山本久江
雁渡し風紋ずれてずれてゆく
原田達夫
如何様をまじめに勤め捨案山子
山□ひろよ
野兎の毛となる蘆の穂絮かな
山本無蓋
柚子当り年ながながと牛の尿
佐藤山人
烏瓜の中に丸まり逝くもよし
荒木 甫
木枯一号絵手紙の太き文字
成田美代
ひとりでに点る街の灯冬に入る
森田尚宏
秋の蛇石を枕にしてをりぬ
和田紀夫
数学の教師面なりいぼむしり
西村将昭
木の葉髪開かぬドアを蹴りもして
齊藤哲子
笑む性を人逝きてなほ石蕗の花
来海雅子
落葉松の散り迷はずに散りにけり
松林依子
蜜柑もぐ尻を支へて自転させ
村 卯
ちちははのいろに咲きたる花八手
江澤弘子
ペンギンの小さな欠伸秋日和
坂場章子
拾ひゐる人も尊し落穂かな
藤兼静子
古文書に借用書あり神無月
宮ア根
ざくろの実触れなば血潮滾るかに
飯岡敬子
凩の掃き残したる一つ星
品正敏


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