Shigi-haikukai
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平成28年1月号より
代表近詠
冬林檎
井上信子
菰巻の松や父ほど重かりき
長身の父の横顔冬りんご
沖波の白さ優しさ冬林檎
あまつさへ歯根おとろふ霜の夜
腹背に友垣のあり小六月
初冬の青空に似る恋をせし
みな去りて冬青空の残りたる
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選者近詠
額縁
橋道子
薄紅葉パズルのやうな駐車場
懐かしむは寂しむに似る烏瓜
秋といふ額縁動物園しづか
秋日影眠るゴリラの舌桃色
榠樝の実ひとつは獏に似るかたち
眼を射らぬ照りに徹して月の舟
ひよんの実を吹きこの先も身勝手に
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当月集より
滝痩せて午後の日差しを正面にす
中江月鈴子
鶲来て気力湧きたつ目覚めなる
山ア靖子
団子虫てのひらに乗せ秋うらら
荒井和昭
爽涼の水辺は誰も黙しけり
風間史子
二代目の長身痩躯松手入
田村園子
コスモスを辿りつつゆく船溜り
田令子
古民家の郵便局やそばの花
加藤峰子
猿山の手窪で掬ふ秋の水
相良牧人
冬瓜と地球儀の中身腸捻転
荒木 甫
細茎に露の連珠の光りけり
石田きよし
豊秋を猿の吼ゆとも笑ふとも
成田美代
本州のここに始まる実玫瑰
山口ひろよ
父を待つ鬼の子貌を出す門扉
中山皓雪
むさし野は台地におはす芋嵐
箕輪カオル
ごろごろと栗沢山の男飯
田原陽子
腕まくりおろすもひとり夜長かな
数長藤代
おとなへば紫苑ちりばめ友の庭
椿 和枝
一等判ぽんぽん打たる今年米
佐藤山人
雨上り耳の高さに虫の濃し
原田達夫
食卓の視野に収まる青みかん
笠井敦子
萩のトンネル抜ければ脱皮出来さうな
山本無蓋
被災地へ届けと主将甲子園
田部井幸枝
こすもすの中こすもすとなりあそぶ
齋藤厚子
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寒麦集より
海女小屋の釘打つ音やゑのこ草
平野みち代
文の束クリップに錆秋の風
松林依子
隼人瓜この色描かねば始まらぬ
遠山みち子
細心は塩大胆に秋刀魚焼く
奥井あき
一合の枡にあふるる新走
藤沢秀永
野良着にはポケット多し秋澄めり
鎌田光恵
柏手は漢の身幅秋まつり
江澤弘子
狛犬の上向く鼻孔小鳥来る
坂場章子
歩を突きてあとは成りゆき夜長酒
中島芳郎
夕紅葉一杯だけと屋台酒
足立良雄
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羽音抄
縄文の子等は歯で剥く栗の皮
荒木 甫
さふらんも赤糸も売る道の駅
遠山みち子
逃げやすき夕日とどめて烏瓜
箕輪カオル
名月や影絵はいつも狐より
山内洋光
畝ごとに日向と日陰大根蒔く
石田きよし
かつて海底なりし山頂鷹渡る
甕 秀麿
風紋は金の細波海猫帰る
山口ひろよ
柿落す竹竿化して薙刀に
藤沢秀永
椅子ふたつ置きてひとりの良夜かな
平野みち代
山深き平家の裔の菊合
山本無蓋
十八のどんぶり飯や今年米
安井和恵
紅芙蓉棟方志功の天女のほほ
木澤惠司
造船の鎚の響きや水の秋
三木千代
大空を散らかし放題うろこ雲
伍島 繁
四段に裹返りたる秋の波
青木ちづる
大輪の向日葵は我が誕生花
田部井幸枝
爽やかにおのれも歌ふバースデー
村上すみ子
月光を乗せ川波の砕けたる
斎藤房枝
秋麗友押す友の車椅子
五十嵐紀子
飛ぶよりも吹かれてゆきぬ赤とんぼ
畠山昭司
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