鴫

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平成27年11月号より
代表近詠
小鳥来る
井上信子
句碑の肩やすらかなりし小鳥来て
色鳥や太き音声はるかより
用も無く来ました小鳥影さして
烏瓜引張つてみる誰も来ず
茹栗をむきてやる夜の無くなりぬ
郵便局着付とありぬ柿一荷
街道のま直ぐなること月の中
選者近詠
虚空
橋道子
影からめとりたる日傘坂上る
八月の渦巻く一樹鋼めく
落蝉の百の掴みし虚空百
たよりなき水尾引きまはし恋ボート
猿の腰掛これは子猿のものならむ
白玉や嫂とうに真の姉
尊厳死うべなふ書類遠花火
当月集より

曼珠沙華一夜で原と化しにけり
中江月鈴子
川風や助走促す法師蝉
山ア靖子
鶏頭の長とおぼしき幹まはり
荒井和昭
遠雷や俗事にとんと鈍くをり
風間史子
向日葵の所為シャープペンすぐ折るる
田村園子
立秋の登校坂のゆるやかに
田令子
騎馬像に恩賞のやう蝉しぐれ
加藤峰子
民の声届けとばかり蝉しぐれ
相良牧人
向日葵の迷路にまた会ふ少女かな
荒木 甫
朝の歩まづは燕の三つ子より
石田きよし
一憩の倒木太し苔の花
成田美代
被曝地の人つ子ひとりカンナの緋
山口ひろよ
杉の穂に日輪淡し施餓鬼寺
中山皓雪
水打ちて開門となる懐古園
箕輪カオル
八月や学徒送りし大路なる
田原陽子
制服のキャンプ少年世界から
数長藤代
一筋の涼を潜めし残暑なり
椿 和枝
立葵軍人勅諭忘却す
佐藤山人
牛蛙ときどき目覚む休肝日
原田達夫
空論に枝豆のさや溜りをり
笠井敦子
若さとは笑顔と涙甲子園
山本無蓋
朝涼の理想郷にてまどろみぬ
田部井幸枝
ステンドグラス七十回の長崎忌
齋藤厚子

寒麦集より

真つ青な空が語り部原爆忌
濱上こういち
沖にぐんと入道雲の組体操
甕 秀麿
蛇口から水のどどつと原爆忌
平野みち代
鳥海山見ゆる木橋を鬼やんま
宇都宮敦子
夏炉もて村長おやき焼きにけり
藤沢秀永
廃線の茂りの中へ果てにけり
木澤惠司
宿題も食も一卓夏休み
飯岡敬子
無住寺に水たまはりぬ初ひぐらし
松林依子
古書市の賑はひに来てうなぎの日
足立良雄
死すための夜襲訓練夏の星
田中涼平

羽音抄

寝つかれぬ闇を泡して水中花
森田尚宏
炎天を来て硬骨の人惜しむ
江澤弘子
風穴に残暑の素面哂しけり
藤沢秀永
これでもかこれでどうかと揚花火
石田きよし
就活の黒のかたまり片かげり
中山皓雪
秋夕陽他人行儀のやうな影
濱上こういち
炎昼の病室突如沸く軍歌
佐藤山人
手花火のその一瞬を惜しみけり
来海雅子
快眠の蝉の穴より出でにけり
荒木 甫
角張つてゐる優しさも冷奴
三木千代
たやすくは涙は出でず敗戦忌
中島芳郎
鬼灯や語れば嘘の厚み増す
山本無蓋
父帰る母の決めたる終戦日
杉田 杏
食べる事寝ること忘る案山子翁
佐々木秀子
夜の海の白衣ふつくら海女祭
鎌田光恵
彼の世には知る人多し百日紅
堀岡せつこ
中耕の鍬を休めて草清水
柴田洋吾
赤面を隠すに開く秋扇
太田英子
不確かな記憶を辿る墓参かな
石山博志
水虫を診る女医さんのもの静か
森 しげる


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