鴫

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平成27年7月号より
代表近詠
花石榴
井上信子
夏菊の土のあたりの明けそめて
空腹と言へば空腹青葉寒
お隣りはながきお留守に花石榴
ざくろの花散り散りといふ散り方に
夏菊の白かたくなと思へる夜
禽がきて六月さむく目覚めたる
決められて一人住みをり六月尽
選者近詠
地雨
橋道子
春の川海へほぐれてゆくところ
谷風にかたかご耳を欹てり
芽吹かせつやがて地雨となりにけり
春昼の骨董店のタイプライター
傾ぐ世を二人でなげく春霙
長堤の一丁ほどの囀区
競ふさまなくて全山桜かな
当月集より

盆近き寺に電話をかけにけり
中江月鈴子
のぼる日を胸にうけ止め残る鴨
山ア靖子
水桶に花の散り込む日和かな
荒井和昭
片膝を机代はりに花なづな
風間史子
羽目外せ順路逸れよと亀鳴けり
田村園子
川沿ひの桜から咲き初むるなり
田令子
たんぽぽや母在る限り手をつなぐ
加藤峰子
たんぽぽの同時多発や川づつみ
相良牧人
職業欄年金と書く万愚節
荒木 甫
雨を抱き風を放さぬ花の雲
石田きよし
霞みけりわけても主峰モンブラン
成田美代
衣笠を頂く心地花堤
山口ひろよ
終活と婚活に沸く花むしろ
中山皓雪
学校の羊が鳴いて花の雲
箕輪カオル
おぼろ夜の「清貧の思想」読み返す
田原陽子
有り余る自由を恐る残る鴨
数長藤代
ぎしぎしの抜き乾されある資料館
椿 和枝
花万朶出世者の無きクラス会
佐藤山人
榛芽吹き日の溢れゐる流れかな
原田達夫
ぜんまいの開かぬうちに姉訪はな
笠井敦子
やはらかき雨音を聴く朝寝かな
山本無蓋
一声の明るさ雨の花木倍子
田部井幸枝
目借時修正液に手を汚し
齋藤厚子

寒麦集より

花筏急にまとまり始めけり
宮ア根
剥ぐべきか剥がざるべきか桜餅
和田紀夫
偲ぶとは語り継ぐこと花見月
江澤弘子
すかんぽを揺らし堤を駆け抜ける
鎌田光恵
たまさかの一人野遊び靴軽し
松林依子
ぶかぶかも一寸きつめも入学期
三木千代
京洛の目刺引き売る蕪村かな
中島芳郎
四月馬鹿生前葬へ酒提げて
足立良雄
てふてふの県境の川渡り切る
村 卯
くれなゐに倦みて安らぐ山桜
藤沢秀永

羽音抄

逃水や吾にすこしの女運
山本無蓋
海光を乱さぬやうに目刺干す
藤沢秀永
揺れながら入り日を包むチューリップ
江澤弘子
春うらら波平さんとフネさんと
宮ア根
一水の花菜明りに曲りけり
石田きよし
山頂の天に突つ込む鯉のぼり
箕輪カオル
掌を春日に翳すアメジスト
齊藤哲子
琺瑯の空もちあげる梨の花
中山皓雪
ビジネスマン一課こぞりて花の昼
松林依子
たんぽぽや嘘を明るく言へる父
木澤惠司
鬨の声秘するごとくに花辛夷
成田美代
シャガールの空に紛れし朝寝かな
中島芳郎
揚雲雀降り来る時も囀れり
原田達夫
騒めきに追ひ越されゆく春コート
田令子
効かぬ手の生さぬ仲めき四月尽
青木ちづる
長閑けしや円周率のピアノ曲
村 卯
どこへでも行き着く覚悟花いかだ
藤兼静子
花の陰父ゐるやうに座すベンチ
坂場章子
能面の裏の凹凸春惜しむ
斎藤房枝
鐘一打風ふくらませ桜散る
吉川恵子


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