鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

平成27年6月号より
代表近詠
春深し
井上信子
春深し抱き合うてくる山と川
たんぽぽや手足素直におとろふる
見ゆるもの見えざるものに櫻散る
桑解くや坂を下るに手をつなぎ
チューリップただ同郷といふ故に
荷風忌のきのふでありし夜道かな
北窓になじみて居りし弥生尽
選者近詠
連載
橋道子
春水に映れば木々の寄り合へる
村なりしころの梅東風水音も
耕してゐるとも見えで屈む人
逃水の追ひつめられて隧道へ
芽木明り膝組む上のマンドリン
連載を交代に読む花菜漬
連載の終るを惜しむ春惜しむ
当月集より

目の前の暗くびなほど新樹光
中江月鈴子
途切れなく法要太鼓春深む
山ア靖子
睡蓮の水の濁りも春めきぬ
荒井和昭
草萌えや逸る気に足追ひつけず
風間史子
雛飾る接骨院も交番も
田村園子
店先の雛を巡る霧の雨
田令子
けん玉の糸に絡まる梅の風
加藤峰子
黙祷の足踏ん張りぬ春北風
相良牧人
春帽子カフェ・ド何某へと消ゆる
荒木 甫
早やいくさ新入社員の一気飲み
石田きよし
見覚への句碑の深文字風光る
成田美代
灯朧盃を空ければ縮む距離
山口ひろよ
うららかや両手に杖の弱法師
中山皓雪
鷹鳩と化して子豚のレースかな
箕輪カオル
明日納む雛の灯そのままに
田原陽子
上ばかり見てゐて老いぬおぼろ月
数長藤代
啓蟄や雀百羽の地をつつく
折橋綾子
地に溢る花菜の黄色天も染む
椿 和枝
楤の芽の脱苞を待ち虎視眈々
佐藤山人
退屈な蛤ひゆうと水飛ばす
原田達夫
雪解川来る季節のプロローグ
笠井敦子
折鶴を留める網棚種物屋
山本無蓋
粛々と三万あまり曾我の梅
田部井幸枝
鸚哥のゆるりと眠る日永かな
齋藤厚子

寒麦集より

恋猫のさめたる後姿かな
山内洋光
佐保姫の遅れて着きし渋谷駅
足立良雄
碧落に芽吹き初めたる紫木蓮
堀岡せつこ
菜の花は君の色だと言はれけり
宮ア根
囀りや漢かたまり紫煙吐く
藤沢秀永
靖国の初花仰ぎてゐたりけり
甕 秀麿
ひばり東風養生中の芝堤
山本久江
白梅の咲ききつてをり夕間暮れ
青山正生
春寒や衣に隠すこけしの手
飯岡敬子
無駄足に得る何かあり雀の子
田中涼平

羽音抄

聞き流すときも頷く桃の酒
来海雅子
啓蟄の薪食らふかに登り窯
荒木 甫
山の端のほろほろ暮るるつるし雛
遠山みち子
正確な妻の下書納税期
濱上こういち
たんぽぽの貼り付いてゐる風岬
山本無蓋
春泥の故郷に戸籍置きしまま
足立良雄
大曲の総譜となりぬ牡丹雪
相良牧人
ネックレス借りに卒園式の母
山囗ひろよ
桷の木に琴弾鳥が来ては去る
宇都宮敦子
春の闇切れさう木屋の長包丁
奥井あき
雪解風底ひに母の機の音
山本久江
春寒の待ち針落とす真夜の音
成田美代
搗布干す大きな日差し滲ませて
鎌田光恵
フロントの雛の列やダンプカー
安井和恵
風光る街へ扉は回転す
山内洋光
木製のピノキオも座す雛飾
村上禮三
吹き戻さるは鴉の名折れ春疾風
島田喜郎
いかなごのくぎ煮上手の友も亡し
岩本紀子
自づから桜の大樹拝めり
堀岡せつこ
終章の耳を澄ませば春しぐれ
佐藤佐津


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved