鴫

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平成27年5月号より
代表近詠
風音
井上信子
風音の一夜でありし雛あられ
豆雛の目鼻かすかに残りをり
鶯のまだととのはぬままの聲
揺れながら露地の奥処の青楓
青楓生々流転ありにけり
地境の塀貧しくて木瓜ま白
木瓜白く全開にして家古るぶ
選者近詠
恩寵
橋道子
凍ゆるむ三角の樹の頭より
佐保姫をためらはせたる漏斗雲
陽炎うて異次元に入る跨線橋
春北風の素通りばかりシャッター街
ばらばらに見つかる耳輪あたたかし
恩寵を遅れて知りし梅真白
継ぎはぎの己れ纏めむ牡丹雪
当月集より

杉の実鉄砲造る父より習ひけり
中江月鈴子
天へもの申すごとくに辛夷の芽
山ア靖子
春の雪河原の雀群なしぬ
荒井和昭
青き踏む紙一ト束を筒に持ち
風間史子
待春の壺素朴とも稚拙とも
田村園子
薄氷の残る県都の中央区
田令子
発心に優る自愛や大根煮る
加藤峰子
お手玉をするに程よき寒雀
相良牧人
一山の風の一陣鷹一閃
荒木 甫
梅ひらくなぜ危め合ふ人類は
石田きよし
春の眉月山並を統べるかに
成田美代
堅雪や日に二便なるバスを待つ
山口ひろよ
薄氷にやや傾きし門田かな
中山皓雪
春光やいらかの先に遠筑波
箕輪カオル
何も彼も許されてをり春の雪
田原陽子
探梅や翡翠に足止められし
数長藤代
寒紅や死ぬ迄おしやれでゐたいけど
折橋綾子
物干竿まろき氷柱の犇けり
椿 和枝
殺風景とは一夜明くどんど跡
佐藤山人
神生みし島のどかなり鳥交る
原田達夫
花のなき壺に余寒の溜りをり
笠井敦子
富士臨む茶花日和の伊豆の浜
山本無蓋
同じ目を春あけぼのの水平線
田部井幸枝
障子なき家に住みなれ春炬燵
齋藤厚子

寒麦集より

恐竜の模型の軋み草萌ゆる
江澤弘子
寒柝のこの星火種絶えざるや
中島芳郎
曳猿の空を見てゐる梅白し
宇都宮敦子
冬たんぽぽ猪首すくめて咲きにけり
飯岡敬子
ぞつき屋に並ぶ昭和史冬ざさる
足立良雄
寒晴や爪先立ちに干す白布
坂場章子
春の雪反乱したくなりにけり
宮ア根
薄氷の保護膜めきて棚田守る
藤沢秀永
手作りの注釈つきの草だんご
山内洋光
どんど火の熱冷めやらぬ釦かな
佐藤みのる

羽音抄

さびしくて樵漕ぐなり半仙戯
中島芳郎
氷面鏡こはせし悔を引きずれり
藤兼静子
竹林の百幹雪の舞うてをり
三木千代
うすらひに水面の別れ近づけり
山囗ひろよ
罅入るほどに晴れたり寒の空
平野みち代
高々と春光を吸ふ象の鼻
石田きよし
梟の足踏み替ふるばかりなり
相良牧人
生きてゐることを忘れる日向ぼこ
中山皓雪
そこいらは空の飛び地か犬ふぐり
原田達夫
雀色時酔ひの身を置く半仙戯
齊藤哲子
春の闇雁字搦めの赤い糸
宮ア根
モノクロに光添へたり猫柳
橋信一
白魚や量りの甘き婆の笊
安井和恵
シナマンサク満開公園人気なし
中下澄江
オブラートほどの風なり寒明くる
蒲野哲雄
人間を変へられないで目刺焼く
鈴木征四
贈られて彼女手編みの春帽子
村上すみ子
なやらひの鬼が手をふる振り返す
佐々木秀子
山上の大きな星に寒明くる
畠山昭司
下萌やパオにも似たる土竜山
左京信雄


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