鴫

バックナンバー(鴫誌より)
鴫誌より(最新号)へ
バックナンバー(一覧)へ

平成26年12月号より
代表近詠
一旅
井上信子
練炭の届いてゐたる勅願寺
寄り合つてをり捨て墓と菊畑
大桑の洞然と抱く冬日かな
冬麗の九十九谷に子を育て
畳替済みてゐるらし湖に風
唄のなき一旅過ぎゆく茸鍋
西晴れの湖に下りたる神無月
選者近詠
こなひだ
橋道子
鰯雲梢をぐらき欅かな
近道は坂多きこと曼珠沙華
ふりしぼるとは秋蝉の一度鴫き
鉄棒にぶらさがり見る踊の輪
半世紀前はこなひだ秋扇
灯火親しく明朝体とゴチックと
銀漢や死者は生者にのみ生きて
当月集より

全山を色無き風の覆ひ尽くせず
中江月鈴子
来歴の句碑を一巡して秋思
山ア靖子
蓑虫にとほき波音届きけり
荒井和昭
月代や訪うて口数足らざりし
風間史子
髪切つて九月へめくるカレンダー
田村園子
秋の薔薇胸の扉を開きけり
小林正史
風船かづら風の色うすみどり
田令子
桃選ぶ視線まあるくあてがひつ
加藤峰子
朝蝉の宣戦布告受けてをり
相良牧人
今年また汚れやすくて韮の花
荒木 甫
秋蝉や戦争知らず古稀を過ぐ
石田きよし
芒野や鳥語も交じる風の襞
成田美代
起き臥しの二人まちまち八月尽
山口ひろよ
三人の舎弟白髪新走り
田原陽子
秋日傘北病棟へたたみけり
数長藤代
団樂の遠くなりけり衣被
中山皓雪
少年の面変りすや赤のまま
折橋綾子
やや冥き色を敷き展べ秋の海
椿 和枝
泰然と雌に喰はるる雄蟷螂
佐藤山人
田の道に墓参の車列をなし
原田達夫
去ぬ燕巣には羽毛の吹かれをり
笠井敦子
爽やかや近くなりたる筑波山
山本無蓋
一対の手塩にかけし主の菊
田部井幸枝
星流れワイングラスに届きけり
齋藤厚子

寒麦集より

シャッターを上げて夜業の農具小屋
山本久江
逆上がり手伝ふやうに梨をもぐ
村 卯
しまがれ
 
縞枯山に吹きくる霧のかたさうな
宇都宮敦子
ねらひうち逸れて大受け里神楽
来海雅子
夏痩せもせずサルトルは本棚に
青山正生
母屋にて祖母の綱引く鳥威し
藤沢秀永
潔き妻の断捨離秋の陣
濱上こういち
この憂さを燃やす種火に曼珠沙華
甕 秀麿
秋茜への字に翅をやすませて
堀岡せつこ
種なしの何かの足りぬ黒葡萄
田中涼平

羽音抄

ユニクロの鏡明るし敬老日
足立良雄
自転車に冬瓜待たす小半日
箕輪カオル
沈下橋高く定まり稲の秋
甕 秀麿
案山子消え野州の平野のつぺらぼう
松林依子
新涼や目覚めを誘ふ足の裏
森田尚宏
菊日和影より先にゆく笑ひ
鈴木征四
留守電へ他人行儀に秋暑し
坂場章子
残照の洩れて荔枝の影もやう
来海雅子
父さんのためとオクラを二度三度
山本無蓋
狼藉をはたらくやうに稲を刈る
濱上こういち
平石の一枚橋や蓮の実
成田美代
いぼむしり己れの影を鷲掴み
宇都宮敦子
子の辞書を無断でつかふ雨月かな
原田達夫
物干しに久米の仙人月眺む
中島芳郎
遠国の女王の目の秋思かな
青山正生
秋茄子のぶらりと住めば都なり
海老根武夫
風鈴の音色瞼に嬰眠る 
柴田歌子
秋日和継目ごとんと貨車勤く
山内洋光
邪魔されずいざよふ月にとどきさう
天野正子
子規忌とや裏木戸すいと開く気配
村上禮三


鴫誌より(最新号)へ

バックナンバー(一覧)へ

▲このページの先頭へ
旧字体等で表記できない文字は書き換えています
Copyright(c)2011, 鴫俳句会.All rights reserved