鴫

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平成26年10月号より
代表近詠
浅茅生の
井上信子
浅茅生のところどころの立木かな
萩の風そのつぎの風お城下
砲台跡といふに住みつく芒原
一軒の川宿のこと秋の風
夕まけて茶房の欲しき草の花
みせばやの垣ほそ道にはみ出せる
鶏頭のうつ伏せしたる引返す
当月集より

どしや降りの原爆ドーム広島忌
中江月鈴子
おかげ以て天下の寺の蓮見かな
山ア靖子
抽斗を引出しておく土用干
橋道子
とうすみの恋の連理の水あかり
荒井和昭
卯月ぐもりを紺系に身繕ふ
風間史子
水神を祀る水音鴨足草
田村園子
八月の机の角がとろけてる
小林正史
バス曲がりゆく夏草の学内を
田令子
湯上りの母抱く盛夏のバスタオル
加藤峰子
断崖に果つる岬や大夕焼
相良牧人
七回忌宇治にて六月了りけり
荒木 甫
雨脚や脱ぎつ放しの蛇の衣
石田きよし
段瀑の原生林を分かちけり
成田美代
桑苗母の畑まう他人のもの
山口ひろよ
取り止めるわけにはゆかぬ男梅雨
田原陽子
防災の覚悟講習梅雨の雷
数長藤代
裏山の緑拝殿の人みどり
中山皓雪
否も應も無く生かされて半夏雨
折橋綾子
草泉きれいなカップ置かれあり
椿 和枝
征くだけの聖戦過去に時鳥
佐藤山人
黴の棚専門書など括りけり
原田達夫
廃船へ浜昼顔の辿りつく
笠井敦子
Tシャツを着替へて汗の療法士
山本無蓋
蓮ひらく勢ひに日の登りけり
田部井幸枝
炎天を来て円柱のしづかなり
齋藤厚子

寒麦集より

弁舌の顔を見てをり氷菓子
箕輪カオル
偕老の会話の途切れ軒風鈴
安井和恵
別人に非ず羅ゆるやかに
宮ア根
白南風やモデルルームのやじろべゑ
平野みち代
花茣蓙に定位置のあるくらしかな
遠山みち子
竹林の色に染まりて風涼し
西村将昭
三歳が乳母車押す立葵
甕 秀麿
見頃とは競ひ咲くとき蓮の花
山内洋光
長梅雨に鋼のやうな肩の凝り
森田尚宏
己が影かぶせ干梅裏返す
宇都宮敦子

羽音抄

蕗の雨後ろの山もかくしけり
森田尚宏
夜偶に泣き止まなくなる金魚
山□ひろよ
さよならのらに開かるる黒日傘
石田きよし
夏の蝶地に降りて地を掴みをり
坂場章子
青岬マリアのごとき灯台よ
相良牧人
亀の眼の底まで澄めり梅雨明くる
佐藤山人
ちよきできてちよきばかりの児さくらんぼ
平野みち代
梅雨晴の犬が顔出す達磨船
中島芳郎
日盛りの沖行く船に託す夢
山本無蓋
大虹の底にぽつんと筑波山
原田達夫
臥す姉に遠く離せり蚊遣香
三木千代
白南風の浜に島唄流れけり
宮ア根
おめおめと夕まくなぎに道譲る
和田紀夫
桐の下駄求む浅草巴里祭
藤沢秀永
鉄風鈴いつせいに鳴る物産館
松林依子
青田波風に影あるやうに沸き
飯岡敬子
香水の蓋きつちりと姉逝けり
大島節子
呼び止めてトマトを一つ少年に
濱上こういち
草むしりだんだん手先だけになり
山口輝雄
睡蓮や水にしたがひ水に和す
島田善郎


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