Shigi-haikukai
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平成26年8月号より
代表近詠
黒揚羽
井上信子
六月を送らむ夜の風の中
川端にこのごろ行かず夕焼雲
梢から何か落せり鴉の子
子鴉の胸こんもりと静かなり
射干の丈の定まる朝日影
大傾ぎして射干の美しき
遅れきし蝶々黒し翅太し
黒揚羽ほどに静かにあらむかな
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当月集より
立秋やどの道下りても海に出る
中江月鈴子
天界のこゑを聴かむと松の芯
山ア靖子
雨音のときどきとどく朝寝かな
橋道子
口開けしをろちのやうなアマリリス
荒井和昭
あとさきを濁す萍引き寄せて
風間史子
永き日の紐靴草の香を放つ
田村園子
速達の宛名にじみし半夏雨
小林正史
飛び石連休藤の花零しつつ
田令子
新緑の椅子は居眠る母の首座
加藤峰子
縄文の模様さながら蜷の道
相良牧人
能が出る山の筍届きけり
荒木 甫
羅のひと凛と座す砂かぶり
石田きよし
一雨過ぎ増すさみどりも歩の幅も
成田美代
好きな色なのに似合はず春セーター
山口ひろよ
蒲公英の花を毟りて来るこない
田原陽子
練習につぐ練習の四月尽
数長藤代
歩きスマホの指すれ違ふ街薄暑
中山皓雪
何も彼も思ひ出ばかり桐の咲く
折橋綾子
地の塩のごとく野の花畦埋む
椿 和枝
フェリーの曳く一瀉千里の薄暑光
佐藤山人
日の差して燃え上りたり山つつじ
原田達夫
放心のうちに溜りし蕗の皮
笠井敦子
復活の初期段階や羽抜鶏
山本無蓋
五月晴軽くて大き布袋
田部井幸枝
父と児のみどりに下ろす三輪車
齋藤厚子
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寒麦集より
昼の蚊とエレベーターに乗り合はす
村 卯
色褪せてゐて貫禄の鯉幟
坂場章子
病床の母や窓辺に夏の蝶
安井和恵
補助輪を外して転ぶ若葉風
甕 秀麿
夏帽子四つに畳みてカフェテラス
宮ア根
曇天と無風が嫌ひ鯉幟
西村将昭
会議の腰折つてゆきけりはたた神
江澤弘子
蚕豆の莢の中なる核家族
足立良雄
牛蛙相聞までを音合はせ
奥井あき
薔薇一輪玉の如くにちやほやす
来海雅子
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羽音抄
壊すことできぬ静けさ苔の花
箕輪カオル
春落葉風を奔らすほどにかな
原田達夫
水がまだ来ぬ噴水の魚の口
山□ひろよ
筍のむかれこの世のすさまじき
荒木 甫
風薫る病衣の襟を正しけり
山本無蓋
白雲に鋏入れたる梨摘果
鎌田光恵
大勢に訪はれて薔薇の寂しめり
石田きよし
幾すぢの組紐ほどく藤の花
三木千代
布きれをいちまい首に風五月
坂場章子
ダーウィンの髯ふくよかや抱卵期
江澤弘子
純金の春満月の水平線
村 卯
鎧ひたる騎士の風格夏館
宇都宮敦子
葉桜や一人足らぬを思ひをり
青山正生
夕暮れの色を満たせりアイスティー
田令子
海の風孕みきれずに鯉幟
和田紀夫
亭々の風ゆたかなる山法師
中島芳郎
新緑の高崎線の片思ひ
濱上こういち
大小の闇深かりし蟻の穴
佐藤佐津
薄暑光笑ひ上戸の高島田
五十嵐紀子
仮設地は青一色の鯉幟
早田路香
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