鴫

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平成26年3月号より
代表近詠
冴ゆる
井上信子
冬木立二本は父のむかしより
冬の木のたがひにあちら向いてをり
この町の大きな池と寒夕焼
留守の間に小鳥の置きし冬すみれ
いちにちの優柔不断霜の夜
気がつけば昨日につづく煮大根
寒餅を玉と置きたる夜もすがら
テーブルは囲むものとぞ冴ゆる夜
当月集より

温泉上がりのまづは地酒の大晦日
中江月鈴子
花八手果てなく白し義兄逝く
山ア靖子
たち割つて大冬瓜の腹うつろ
橋道子
人葬り虚しき雪のかぎりなし
中村恭子
爪先に落葉集める朝かな
荒井和昭
小間結びほどきしやうな冬菫
風間史子
短日のポストに落す悔み状
田村園子
冬菫星の雫に眠りけり
小林正史
朝日満ち光の海となる落葉
田令子
水鳥の眠りを覚ます白い風
加藤峰子
言ひ当てて縁深むる冬桜
相良牧人
鳩の首世は平静とまた潜る
荒木 甫
鴨と鷺離れたるままマンデラ逝く
石田きよし
日を入れて猛き航跡小六月
成田美代
くれなゐの尽きてか黒き冬さうび
山口ひろよ
行く年の三日月に添ふ星ひとつ
田原陽子
句碑へこゑかけて見おろす冬の川
数長藤代
生きいきと老いて柚子湯に乳を沈め
中山皓雪
別れあり握り合ふ手の冷たくて
折橋綾子
冬木立月日静けく積りをり
椿 和枝
渾身の朱耀やかしからす瓜
佐藤山人
七五三絵馬高く吊る親子かな
原田達夫
眠る山山彦の声よく透る
笠井敦子
赤松の菰巻の縄花結び
山本無蓋

寒麦集より

海の夢覚まされ牡蠣の剥かれけり
甕 秀麿
十二月書肆の閉店挨拶状
足立良雄
着ぶくれて棒杭のごと電車待つ
来海雅子
冬晴れに応ふるやうな鳶の笛
箕輪カオル
会津贔屓薩摩贔屓や年忘
江澤弘子
一羽醒め場所を変へたる浮寝鳥
鎌田光恵
雪もよひおひとりさまと案内さる
宮ア根
この池のこの岩のこの冬紅葉
坂場章子
出世する手相と言はれ葱刻む
平野みち代
小春日を大きく歩き帰りけり
齋藤厚子

羽音抄

川土手の暖色として枯尾花
村上すみ子
バスが人捨てて行きたり冬木道
甕 秀麿
枯蓮の背丈いつしか揃ひけり
藤沢秀永
袖たたみされヘルパーの裘
齋藤厚子
神託のやうな一声冬の鵙
相良牧人
雪吊の縄を引きあふヘルメット
箕輪カオル
悴む手今朝の鍵穴逃げ回る
西村将昭
秘事のごとき手囲ひホットコーヒー
成田美代
ライダーのジッパー太き裘
平野みち代
同じ石見つめてをりぬ日向ぼこ
宇都宮敦子
冬はつとめてではなく夕陽かな
濱上こういち
石蕗の黄の一徹にして暮れ残る
藤兼静子
読み聞かす本や狐の こん と啼く
青木ちづる
生かされて寛解に在り日記買ふ
田中涼平
只管に人参を掘る未来掘る
山本久江
凍空の星の数など糺したる
中下澄江
見はるかす筑波隠しの冬の雨
和田紀夫
あの日より千日目なり大枯野
村上禮三
闇汁や河豚入れたとかいれぬとか
堀岡せつこ
ひとり来て二重担保の冬田打つ
海老根武夫


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