鴫

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平成25年10月号より
代表近詠 <
かなかなや
井上信子
低く来て色濃かりけり秋の蝶
かなかなや箸一膳の水を切る
一日のながし終戦の日の暮るる
糸とんぼ御歯黒蜻蛉ありありと
気がつけば蚊帳吊草の他はなく
蚊帳吊草庭かたむけて居りにけり
高窓の夕日明りや川明り
大窓の脚長蜘蛛の夜の長し
当月集より

今日ありて明日ある桔梗咲にけり
中江月鈴子
軽鳧の子のもう一端の澪成して
山ア靖子
緑蔭の階椅子になり卓になり
橋道子
穂に出でて青田の青の立ち直る
中村恭子
水貝やひとつぷりてふ江戸言葉
荒井和昭
緑蔭の誰のものでもなき木椅子
風間史子
立ちのぼる気配片白草の花穂
田村園子
父の日のいつもの手酌なりしかな
小林正史
梅雨明の駅の出口に迷ひけり
田令子
風立ちて海の匂ひの枇杷熟るる
加藤峰子
箱庭の静止両面のままでゐる
相良牧人
梅雨明けや焼いて匂ひの西京漬
荒木 甫
蓄へし色を一気に梅熟るる
石田きよし
こきりこの声よく通る夏炉かな
成田美代
黒揚羽鋼を秘めてゐる如し
田原陽子
晩柑の日本一てふ故郷の箱
数長藤代
シーサーの動く赤屋根風かをる
中山皓雪
香水噴き白眼むかるる老いの館
折橋綾子
元総理の次子の太ごゑ天の川
椿 和枝
長梅雨を膝病むどうし庇ひ合ふ
佐藤山人
蝦夷梅雨やムックリの音の籠るなり
原田達夫
空蝉と遠い月日に遊ぶかな
笠井敦子
馬小屋のいれこむ仔馬梅雨晴れ間
山本無蓋

寒麦集より

べつぴんと名付けられたる金魚かな
平野みち代
駒草と風に震へてゐたりけり
箕輪カオル
学舎の脇にひつそり花蘇鉄
村上禮三
クレーンの鎖垂れ来る朝曇
宇都宮敦子
あみだ籤さながらの紐花胡瓜
佐々木秀子
少年の脱皮か部屋に白きシャツ
宮ア根
山百合や型の異なる墳丘墓
坂場章子
梅雨明の一歩たぢろぐ荒日差
甕 秀麿
梅雨晴間検眼表に環の切れ目
足立良雄
てん草の干されし町の海鼠壁
西村将昭

羽音抄

初心いま望郷のごと青林檎
甕 秀麿
風鎮のことりことりと明日小暑
山本久江
いましめの解けガガンボの萎へにけり
遠山みち子
夏雲崩る水源の山へかな
成田美代
水馬にはか住まひの潦
箕輪カオル
武蔵野は径迷ふべし夏木立
中島芳郎
梅干して一粒づつの色違ふ
鎌田光恵
昼顔や大地の淡く泛ぶ海
藤沢秀永
覗いても子供になれぬ蝉の穴
笠井敦子
蜻蛉つんつん発電風車ぶるんぶるん
村 卯
厳かに落つるほかなき男滝かな
来海雅子
地下鉄の底のそこまで降りて夏至
山本無蓋
竹垣にヘルメットかけ昼寝かな
齊藤哲子
白靴やロマンチストは老いぬれど
柴田歌子
遠雷や寝椅子に顔を剃られをり
村上すみ子
水打ちて生ぬるき風うまれけり
山内洋光
暑い暑いと口ずさむをとこあり
原田達夫
畏れ入る母の健啖土用入
五十嵐紀子
西瓜切る大小ありの五分けかな
安井和恵
古釘に吊す風鈴吹きまよふ
小林昌幸


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