鴫

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平成25年8月号より
代表近詠
青葉雨
井上信子
大学の静かな時間蕗の雨
ひとり行きたし初夏の荷風展
文人といふ名すたれぬ青葉雨
桜桃忌過ぎたりしかばふと老ゆる
もう傘寿とやさくらんぼ送り来し
今年はやわが累代の蜥蜴出づ
とかげ生まれ一寸の身でありにけり
飛び石の十と三つや青葉雨
当月集より

列島のあらかた梅雨に入りにけり
中江月鈴子
風荒れてこその一川鯉のぼり
山ア靖子
牡丹ののちの快晴ひらつたし
橋道子
まんまるい眼の梟の巣立かな
中村恭子
騒がしき燕の空になりにけり
荒井和昭
さへづりの止みて夕べの樹となれり
風間史子
耳鳴りは藤の古木の囁きか
田村園子
海光やふつと匂へり桐の花
小林正史
みちのくへ幾つ植田のつづきけり
田令子
早乙女の荷物はみ出す背負龍
加藤峰子
冷し酒出羽三山を下りてより
相良牧人
藤散るや老懶といふ哀しさに
荒木 甫
隣席の溜息うらら高麗屋
石田きよし
緑なる緑のあはひ里日和
成田美代
屈原の無念や如何に粽解く
田原陽子
清やかや憲法の日の皿小鉢
数長藤代
街寂びて若葉の伸びる音すなり
中山皓雪
山荘の青葉や小鳥手に止まる
椿 和枝
舌頭に轉がし新茶試飲会
佐藤山人
冥界の近道はそこ花おぼろ
原田達夫
山法師車窓にとらへ北進す
笠井敦子
先導のかんかん帽子三社祭
山本無蓋

寒麦集より

回診のごと傷をみる接木かな
山□ひろよ
やはらかに砂躍らせて山清水
箕輪カオル
更衣部屋ちらかしてちらかして
齋藤厚子
葉桜や一歩一歩の息づかひ
中島芳郎
卓上の光の中の水中花
濱上こういち
振つてみていとも軽しや小判草
森田尚宏
巌滑る水の白さや撫若葉
和田紀夫
猫の子の青き目をしてもらはれる
遠山みち子
餅負ひの嬰の足取り五月来る
安井和恵
朝粥の真実白し夏に入る
江澤弘子

羽音抄

化偸草咲く弛み緊りの空の下
佐藤山人
鰭のない虎魚となりて汁椀に
宇都宮敦子
山容を潮の彼方に夏霞
坂場章子
瞑りても天地眩し茅花原
成田美代
新聞束ね母の日の外にをり
田令子
心病むほど青葉酔してをりぬ
平野みち代
陽炎にそそのかされしアスファルト
山口ひろよ
ためらひの投凾音や藤は実に
江澤弘子
八十八夜寒の杭打ちメジャー伸ぶ
中山皓雪
朽舟の底をつらぬく蘆の角
森田尚宏
藁みごの三尺ありぬ笹粽
奥井あき
遠山に白雲の笠袋掛
山本無蓋
水売りのゐたといふまち夕ぐれる
遠山みち子
蝉生る地中の闇を背負ひつつ
鈴木征四
曾祖母の箪笥も薔薇も引継げり
椿 和枝
反省の未だ足らぬぞ浮いて来い
和田紀夫
子供の日七等分はむつかしき
齋藤厚子
炊飯の蒸気窓辺の若葉影
岩本紀子
麦秋の鍬のゆるみに楔打つ
足立良雄
彼の世でも偏屈通す五月かな
宇田川ふさ子


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