鴫

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平成25年6月号より
代表近詠
杜若
井上信子
白ばらのフェンスの長さ文教地区
紅椿ふと住み古りて居りにけり
川端に住むや直ぐなる植田風
暮春なり昔艇庫の跡あたり
夏たんぽぽ長けたりしかば倒れたり
八十八夜乗らずなりたる自転車も
父の字のさらりと座る杜若
遠忌とて淡いろ單衣揃へけり
当月集より

放射線除染進まず燕来る
中江月鈴子
芽柳の自色を醸す吹かれやう
山ア靖子
聖堂の屋根のさみどり春一番
橋道子
三月やひとりの旅の一つの荷
中村恭子
天水に花粉のにごり彼岸西風
荒井和昭
さへづりや凭れ易かる水辺の樹
風間史子
荷造りの隙間に詰める雛あられ
田村園子
蟇穴を出てすつぴんの目玉上ぐ
小林正史
三月の弾む光の束なりし
田令子
ふはふはと大地ほどける雛まつり
加藤峰子
げんげ野に甦りゐるオフィーリア
相良牧人
人が犬犬が人曳く二月尽
荒木 甫
梅を見てほつとお休み処かな
石田きよし
斑野やテラスの白きティーカップ
成田美代
春満月こころ解けゆく迄仰ぐ
田原陽子
見た目より重く荷とどく春一番
数長藤代
破りたきもの陽炎と己が殼
中山皓雪
三月や一握の髪染めに行く
折橋綾子
風荒き日の地に溜り杉の花
椿 和枝
牛蒡剣憶はす發芽まむし草
佐藤山人
碧瑠璃の潮にただよふ春の島
原田達夫
ささがきを水に降らすや鐘朧
笠井敦子
両岸の花の雲分け屋形船
山本無蓋

寒麦集より

高みへと光まみれの告天子
来海雅子
速達の声かけられり二月尽
甕 秀麿
海朧忘れられなき日の近し
宮ア根
恙無き日の食卓の黄水仙
和田紀夫
日本語は和漢混淆黄砂降る
森田尚宏
一瞬のひかりのやうに蜂よぎる
箕輪カオル
芽柳の風に吹かるる渡しかな
中島芳郎
雪解水和音となりて森を出づ
宇都宮敦子
結納や尾鰭の動く桜鯛
三木千代
吊し雛くぐりて案内地図貰ふ
坂場章子

羽音抄

げんげ田に座して懐がらんだう
中山皓雪
集ひゐて励ましの色犬ふぐり
平野みち代
天を編む欅の枝の芽立かな
原田達夫
彼岸入りスカイツリーといふ燭器
山本無蓋
夕波に任せて一羽残り鴨
森田尚宏
畦塗りを一手に享けて卆寿なり
佐藤山人
春満月はすごいぞと夫帰宅
青山正生
鞦韆や不協和音の隣りあふ
宇都宮敦子
ふふみては風を吐き出す若柳
荒木 甫
黒々とふくるる思ひ耕せり
齋藤厚子
啓螢や野菜サンドのはみ出して
甕 秀麿
開きたる手帳のなじむ梅日和
石田きよし
山祗の出羽の田楽真四角ぞ
奥井あき
蘆の角深々と水満ちゐたり
遠山みち子
散財は致し方なし桜鯛
宮ア根
寄せ書きのぎゆうぎゆう詰や笑ふ山
笠井敦子
神木と知らずに忙し百千鳥
飯島風花
啓蟄の診察台に悔しがる
村 卯
春疾風杖と帽子を抱きしむる
久米なるを
草もちが好きと云ふ子にだきつかれ
早田路香


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