鴫

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平成25年4月号より
代表近詠
鳥曇
井上信子
香華なき佛間の冴えてゐたりけり
朝風や御忌の御状届きたる
坪庭の草影ばかり犀星忌
老松に迫りていよよ春タベ
卒業のとんと顔見せぬ子よ
春休みくる自由画の下手な子に
百千鳥髪染めて孫現はるる
春の闇陸橋は逢ふために
一冊に疲れ紫雲英に疲れ
鏡中を風の抜けゆく鳥曇
当月集より

夢に見しさくら大樹の吹雪けり
中江月鈴子
あらたまの神の足下に睡るかな
山ア靖子
常磐木のいよよかぐろし初御空
橋道子
去年今年抱合ふやうに星流れ
中村恭子
水紋の綾を纏ふて枇杷の花
荒井和昭
音のなき喧噪に舞ふ雪ばんば
風間史子
数へ日の包丁に息合はせけり
田村園子
福寿草十全にして人を待つ
小林正史
青空に囲まれてゆく初電車
田令子
冬鴎海を咥へて舞ひ上がる
加藤峰子
冬麗の槙の高垣九十九里
相良牧人
老斑を剃りのこしたる去年今年
荒木 甫
人々を等しく抱き初日かな
石田きよし
地吹雪の窓打つ音や遅昼餉
成田美代
鍋奉行指なめらかに捌きをり
田原陽子
玄関の真つ正面に初日燦
数長藤代
初鏡明日へとつなぐ頬たたく
中山皓雪
気の揉めることの夛しよ年越そば
折橋綾子
大き目に産土神の松飾る
椿 和枝
楔打つ音寒林をそばだたす
佐藤山人
日脚伸ぶ青首吊るす門の内
原田達夫
寒鯉の黙考時としてゆらぐ
笠井敦子
小波の形のままの厚氷
山本無蓋

寒麦集より

陽に透かし光ごと飲む寒の水
和田紀夫
初明り出窓の人形まばたきす
宮ア根
七福神詣重たき小銭入れ
山口ひろよ
柊を挿して隣も老家族
佐々木秀子
昨日より今日の色して掛大根
高森 弘
一枚の空一本の初日受く
三木千代
力つよき波頭のありて年明くる
齋藤厚子
金盞花なだれて礁とほく見ヘ
遠山みち子
内海に集ふ小舟や漁始
森田尚宏
冬耕の真只中に墓ひとつ
甕 秀麿

羽音抄

湯婆や今は戦前かも知れず
石田きよし
裸木の天に宣誓する姿勢
山□ひろよ
襖一双万物を拒みけり
藤兼静子
かりそめの世とは思はじ冬銀河
中島芳郎
餌台に囃子方ゐる初雀
相良牧人
枯蔓のト音記号や谷津の空
奥井あき
積む雪や足形のなき母の家
五十嵐紀子
茎漬にケーキフォークを添へらるる
箕輪カオル
地震ふ列島活き活き御慶かな
荒木 甫
水餅に在所の匂ありにけり
宮崎根
虎落笛和音となりて杉木立
三木千代
鯉捌く無言の父の頬被り
山本久江
ひつそりと友の忌迎ふ四日なれ
椿 和枝
大寒の塊となるピアノかな
原田達夫
雑兵のごとく冬菜のさんざめく
水野嘉子
冬薔薇相容れぬこと今もあり
天野正子
この声は正に狐や高地駅
山口輝雄
マドレーヌ紅茶に浸す日向ぼこ
足立良雄
横一を静かに引きて初硯
蒲野哲雄
うなづくを返事としたる寒さかな
山内洋光


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