鴫

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平成24年10月号より
代表近詠
白露
井上信子
盆過ぎの畳に日射しありにけり
盆の客みな弟で妹で
茗荷きざむ今日の音して居りにけり
秋口の子を連れてをり父の蜘蛛
脚長蜘蛛息すこやかに下りきし
大川を渡るごうごうと長月へ
墓洗ふ門前仲町正午
墓洗ふ母の衿足を洗ふ
秋光や石にわが名の一行分
寄せ墓に白露の日差しありにけり
当月集より

八月の霧たちまちに寄せて来る
中江月鈴子
ハ重葎こゑ生す石の光かな
山ア靖子
半夏生なり木耳の噛みごたへ
橋道子
まつしろな布巾をおろす七月へ
中村恭子
片蔭にながながと寝る猫二匹
荒井和昭
せせらぎを遥かに梅雨の星宿り
風間史子
水面より雨の始まる沙羅の花
田村園子
夕立を抜けて輝くモノレール
小林正史
旧校舎洋館に梅雨明けにけり
田令子
砂山の夕立は槍を剌すごとく
加藤峰子
ゆるキャラのクマの出迎ふ帰省かな
相良牧人
沼風の底沈むかに溽暑かな
荒木 甫
書肆を出で酒肆に足向く暑さかな
石田きよし
粽着く父母在らぬ越路より
田原陽子
雑草のいよよ頑なり七月へ
数長藤代
縦よこに伸びる夏山人いきれ
中山皓雪
茅の輪作り終始見てゐてくぐらざる
折橋綾子
鬼婆の伝説の里黄睡蓮
椿 和枝
親戚に新と旧あり茄子の花
佐藤山人
葉つぱぷるぷる竹の子の育つなり
原田達夫
梅漬けて思はぬ気力出でにけり
笠井敦子
四万六千日朝のユモレスク
山本無蓋

寒麦集より

遅れゆく利休鼠の日傘かな
中島芳郎
冷奴なまけることをこころざし
齋藤厚子
ほうたるの誘ふ甘き小雨かな
村 卯
日方吹く国引大橋けぶりけり
来海雅子
老鶯の声止むときの風の音
成田美代
葭切や沼一周の自転車道
和田紀夫
何処にでも増えてどくだみなりしかな
森田尚宏
何よりも母の好物梅雨鰯
堀岡せつこ
気心はアイロン掛けぬハンカチに
田中涼平
海を眺めつブランチのバルコニー
平野みち代

羽音抄

幾重にも闇に仕掛けや蛍狩り
甕 秀麿
水飲んで紫陽花にすこし近づく
齋藤厚子
にはかなる天の打水父の墓
箕輪カオル
桑の実や聞こえがくれに沢の水
成田美代
走馬燈あとに生まれて先に逝き
中山皓雪
蝉涼し機にかかれる上田縞
宇都宮敦子
草取に膝突く己宥しけり
椿 和枝
胸襟を開きて今に桐の花
来海雅子
他人の手を借りてのりたるハンモック
平野みち代
心耳にて聴くべし蓮の開花音
和田紀夫
挑実る名をちよひめと申したる
青山正生
青葦の半身の浸るしだらでん
村 卯
海還らずビルの群像日の盛り
村上すみ子
麦藁帽こどもの頃はこんな顔
中島芳郎
若干の負けん気茅花流しかな
田部井幸枝
夏の空窓の数だけあるらしく
濱上こういち
滝音の近く抱く児の重さかな
五十嵐紀子
梅雨明ける象はホースの水を浴ぶ
足立良雄
草刈ると薄荷どこかで香りけり
岩本紀子
あふむいて夏の夜空の何探す
鎌田光恵


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