鴫

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平成24年9月号より
代表近詠
晩年
井上信子
夏百日佛事たて混みゐたりけり
甘酒をほたほた運ぶ佛間まで
火を止めてよりありありと蕗の蒼
素早きは草刈り人の昼御飯
銀色ライター草刈りて失くしたる
庭寂びぬ現の証拠の白花も
大揚羽くる閑雅なる午下り
残り香もなく擬宝珠の倒れたる
わが二夜守宮二夜の息をせり
腹巻や晩年をよく聞き分けよ
当月集より

滝となる水を跨ぎて顔洗ふ
中江月鈴子
万緑の奥へ奥へと吸はれゆく
山ア靖子
たまゆらもキャベツ玉巻く波の音
橋道子
水底のやうなつめたさ手の螢
中村恭子
青梅の風に選らるる落下音
荒井和昭
白靴のにじみ旅情といふほどの
風間史子
ハンカチに移す躊躇の手の湿り
田村園子
麦は穂に手招きされてをりにけり
小林正史
さつき咲き初む総会日和なり
田令子
突き当たる音渾身の火取虫
加藤峰子
ぼうたんの羽虫を抱ふ震へかな
前川明子
父の日や素顔のままの父の文
相良牧人
田畑に畦あり畦に姫女苑
荒木 甫
白御影水漬く流れに緑さす
石田きよし
アカシヤの花より眩し河原石
田原陽子
甘藍の畑紋白蝶畑
数長藤代
わたらせの瀬音にはかに栃の花
中山皓雪
 
出支度の取つて返すや日雷
折橋綾子
宇宙よりわが田へ降りしはたた神
椿 和枝
めまといに組し易しと見縊らる
佐藤山人
坑道を出て万緑に浸りけり
原田達夫
蜥蜴の子過ぎり日食始まりぬ
笠井敦子
三日月の顎くすぐる今年竹
山本無蓋

寒麦集より

姫女苑どこにでも咲き愛されず
森田尚宏
芍薬を切つて踏ん切りつけにけり
齋藤厚子
竹煮草近道をして迷ひけり
宮ア根
雑念の些かもなし今年竹
青木ちづる
血色の戻りし爪やさくらんぼ
三木千代
蛍火や畦に廻らす獣柵
和田紀夫
立葵少し上向く骨密度
堀岡せつこ
下校子のホップステップ櫻の実
山本久江
切株の番号太し蛇苺
来海雅子
城門の内に高校栗の花
箕輪カオル

羽音抄

通り名の蠅取草とをしへらる
箕輪カオル
青空のすこし老いたり六月来
甕 秀麿
万緑の底に鎮もる山上湖
荒木 甫
縮緬の重さだらうか花菖蒲
宇都宮敦子
睡蓮を揺らす黒衣のやうな鯉
石田きよし
梅雨晴間エースナンバー干されあり
田令子
八頭身の嫁に浴衣の帯を結ふ
山口ひろよ
決断をしても揺るるよ花擬宝珠
奥井あき
噴水や黙示のごとくはたと止み
相良牧人
卯の花の我が家に咲けば雨も良し
森田尚宏
をちみづにちひさき虹のかかりをり
山本無蓋
変声期らし青芝の司令塔
平野みち代
見て嗅ぎて大地に返す蛇苺
宮ア根
夏蝶のかげのさびしき真昼かな
藤兼静子
翻る卑弥呼の国の夏燕
青山正生
雹降るや弾む高さのランダムに
藤沢秀永
夏山や老いには老いのリズムあり
中村明子
くすくすと半身よけあふ片蔭り
来海雅子
夏掛を人念に干す要支援
久米なるを
雲の峰八十路の夢は奥知れず
池田高清


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